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「もう本当の友達はできない」を読んで。

小学生の時。朝、学校に行く途中。前を歩いている子を僕は追い抜かそうとした。今まで歩いていたよりも、少し早いスピードで。

追い抜かす。単にそれだけのことで、普通は何も起こることはない。しかし、その時は違った。僕が抜かそうとした瞬間に、その子は早歩きになった。今まで歩いていたよりも、少し早いスピードで。

僕だって、一度早めた足を元のスピードに戻すわけにはいかない。「追い抜かす」という目的を達成していないから。僕は歩く。さらに速いスピードで。

その子も歩く。僕に追い越されないように。さらに速いスピードで。

二人はやがて、競歩の選手のようなスピードで歩いていく。最後は、歩くというよりは走っていた。何も話をしていない。言葉のやり取りはない。だけど、二人はちゃんと会話していた。

しばらく走って、二人は笑いあった。なんでそんなに早く歩くんだ、理解できない。そう、互いに思いながら。なぜだかわからないけど面白い。そう、思いながら。

そして、二人は名前を教えあって、友達になった。

20年後。社会人になれば、知り合いはほとんど社内の人間になる。上司には、自分の人事評価を握られている。同期とは、出世競争の中で戦っている。後輩は、いい顔をしてくれているけど、裏で何を言われているかわからない。自分と上司の関係から考えれば、簡単に予想できる。社内の人間関係の相談は、社内の人にしたら流出リスクがある。社外の人には言っても理解できないだろう。

会社を出たら、「飲みニケーションだ」なんていいながら、僕たちは居酒屋へ向かう。社内の人たちとは、「上司がバカだ」とか「会社がバカだ」とか言ってる。社外の人たちとは、「俺はこんなにすごい仕事をしてる」とか「ぜひ今度一緒に仕事しましょう」とか言ってる。不満とか自慢とか欲望とか、そういうのが店の中を充満する。笑うことはあっても、「ここは笑うところだ」なんて考えて笑っている。

店を出たら、みんなふらふらしている。千鳥足を追い抜かして、僕は駅に向かう。早歩きで抜かしてくる人は、もういない。僕は歩く。今まで歩いていたよりも、少し早いスピードで。

もう本当の友達はできない

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