テレビと相思相愛の人たち
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昔のテレビでは、過激な番組はたくさんあったが、今ではほとんどない。クレームもあるし、スポンサーが逃げるかもしれないというのもあり、自主的に作るのをやめてしまう。
制作サイドでは、危ないネタで冒険するより、数字がとれそうな番組で勝負しようとする。そうすると、過去に数字がとれたネタが何度も使いまわされる。その結果、似たような番組ばかりになり、新しいものが生まれにくくなる。そして、何度似たような番組を見ても飽きないという人が残り、彼らにウケる番組ばかりが作られていく。
今一番テレビ番組でウケている(ように見える)のは、「わかりやすさ」だと思う。池上彰さんのように、難しいことをわかりやすく解説する番組もあるけど、中には「間違ったわかりやすさ」を追求している番組もある。例えば、犯罪者にレッテルを貼って解説するニュース番組、テロップを入れすぎるお笑い番組、理解しやすいストーリーと結論ありきで事実をねつ造しちゃうバラエティ番組。正しいかどうかよりもわかりやすさが重視されてしまっている。
ネットではそんな番組を批判する声をよく見かける。「オタク=犯罪者予備軍みたいな報道やめろ」、「テロップが多すぎると、冷めてしまって逆に笑えない」。わかりやすさが裏目に出た結果だ。でも、こんな意見がネットでバンバン出てくるのに、番組構成は変わらない。
番組構成が変わらないのは、ネットで批判するような人をテレビは相手にしていないということなのだろう。テレビ番組がターゲットにしているのは、上でも書いた通り、「何度似たような番組を見ても飽きない人」である。彼らは内容は忘れるが、考え方だけは覚えている。ニュースの詳細は忘れたけど、「オタク=犯罪者予備軍」だし、科学的な根拠は忘れたけど、「あの食べ物は体にいい」というのは覚えている。
誰でもそうだけど、人は自分を肯定してくれるものが好きだ。「やはり自分は正しいのだ」と思うと安心する。今テレビしか見ていない人は、テレビが自分の考えを正しいと言ってくれているし、テレビはそういう人に「正しいんだよ」と言ってあげているという、相思相愛になっているんだと思う。