いつまで利益の成長を重視するか
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「成長戦略」とか「持続的な成長」という言葉はよく聞くけど、「成長」というのが「利益成長率」を言ってるとしたら、それは無茶な話だ。少なくとも、全企業が「利益成長率」を目指すのは不可能だ。
小さい企業が成長する過程では、顧客の拡大に伴い、利益の成長率も大きい。しかし、ある程度大きくなると、商品が顧客にいきわたり、潜在顧客が減るため、顧客の拡大スピードは減速する。
また、利益の数字自体が大きくなるので、利益の成長率を維持するのは困難になる。10万の利益を11万にするのと、10億を11億にするのとでは、同じ成長率でも幅が全然違う。会社の規模が大きくなるほど、同じ成長を維持するのは難しくなる。
しかし、多くの企業は成長率を下げないようにしようとする。販売網の拡大、商品の拡充、新商品の投入。これらの行動は、起業よりはコストは低い。ノウハウは蓄積されているし、材料や既存設備の転用ができるからだ。それに、知名度があると宣伝コストも下がる。このように、起業対比コストは低いが、やっていることは起業と同じであり、失敗するリスクは起業と大して変わらない。
成長率を下げないようにする行動が、しばらくはうまくいったとしても、やはり限界はくる。その時には、雇用、商品、販売網、すべてが過剰になっている。特に、人件費や店舗維持費などは固定費なので、利益の成長が一度止まると、再び伸ばすことは難しい。
それでも、利益の成長率を下げたくない、と思ってしまうと、過剰な投資を続けることになる。しかし、規模的に成長が難しくなっている上、既存のコストもカバーしないといけないので、これが成功することはほとんどない。中には、過剰な接待や会計操作などで、見せかけの利益を計上する企業も出てくる。もちろん、持続的ではない。
利益の成長率が下がるのを受け入れられないのは、過去の栄光を忘れられない、株価への影響が怖い、競合他社に負けられない、などがあるのだろう。しかし、経営者は、いつまで利益の成長を重視するのかを見極めることが重要だと思う。数年間利益成長が続いても、その後に成長率の大幅低下や倒産があっては、意味がない。