日銀の「5分で読めるマイナス金利」の記事が、大学生のレポート以下のひどさ
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これを読みました。
5分で読めるマイナス金利 :日本銀行 Bank of Japan
うーん、確かに5分で読めるけど、こんな低レベルな内容を公開していいんだろうか。一般の人と日銀が対談する、っていう流れで会話が進んでくので、一見読みやすそうではあるんだけど、中身がひどすぎないか、これ。
【目次】
資料全文へのツッコミ
全体を読んでみて
どう書けばよかったのか
マイナス金利に関する個人的な理解と考え
資料全文へのツッコミ
「日銀がマイナス金利にしたって本当?」 「日銀は、3年前から大規模な金融緩和をやってきました。『量的・質的金融緩和』とか『異次元緩和』と呼ばれています。これをもっと強力にするため、1月にマイナス金利もはじめました。」
「5分で読めるマイナス金利」はこのやり取りからスタートします。
この回答は何が言いたいんでしょう。「マイナス金利は金融緩和の一環」ということでしょうか。この文章の読者をどこに置くかによりますが、今までの金融緩和がだいたい頭に入っている、という人でないと、この説明はさらに混乱してしまうかもしれません。「量的質的緩和? 異次元緩和? はて?」みたいな感じで。
ただ、出だしなので、よしとしましょう。後で説明するのであれば問題ないので。
「マイナス金利になると、私が銀行に預金しているお金も減ってしまうの?」 「マイナス金利といっても、銀行が日銀に預けているお金の一部をマイナスにするだけ。個人の預金は別の話です。」 「個人の預金金利はマイナスにはならない?」 「ヨーロッパでは日銀よりも大きなマイナス金利にしていますが、個人預金の金利はマイナスにはなっていません。」
この段階では、日銀が「個人預金の金利はマイナスにはなりませんよ」とは言えませんし、「マイナスになる可能性はあります」と言うのも問題でしょう。想定される質問ではありますが、どう答えても微妙です。歯切れは悪いですが、上のような回答も一つの手ではあるでしょう。
「個人預金の金利をマイナスにするかどうかは、各銀行の判断です(=オレは知らん)」が実際のところでしょうが、こういった文章の中に入れるにはあまり適さないでしょうね。国会の答弁としては、いいんでしょうけども。
「マイナスにはならなくても少しは下がるでしょう?」 「普通預金金利は0.02%だったのが、0.001%になりました。」 「それで消費が悪くなったりしない?」 「100万円預けて1年間の利息が200円だったのが10円になったということです。消費を悪くするほどの規模ではありませんよね。」
この説明はダメでしょ。「消費を悪くするほどの規模ではありませんよね」というのは、「今の日銀の行動は、消費を悪くしている」というのを認めているかのような発言です。
むしろここは、「金利が低くなったから、お金を借りやすくなった」という点を前面に押していくべきでしょう。あとで住宅ローンの話も出てきますが、この段階ですべきです。「預金金利は低いけど、もともと低かったから別に下げてもいいじゃん」的な発言は、預金金利の低さに不満を抱いている全国民を敵にまわす言い方です。
「もともと200円しかもらえなかったんだ。それがひどいんじゃない?」 「そのとおりですね。100万円預けた時の利息が1000円未満になったのは1999年。もう15年以上、預金金利はとても低くなっています。でもそれは『デフレ』だったからで・・・」
いやいやいや、これも墓穴を掘りに行ってるでしょう。景気回復のため、投資活動を促すために、低金利は必要だった、といったことを説明するべきではないでしょうか。
「デフレだったから金利が低かったんです」は、普通の人が説明する分にはいいでしょう。しかし、ここで説明しているのは「日銀」です。日銀が政策金利をいじってるんだから、こんな言い方では「他人事」のような印象を与えてしまいますよね。「こういう目的で金利を低くしてたんですよ」といった説明が必要でしょう。
「デフレって何?」 「物価が毎年のように下がることです。日本は15年間もデフレでした。」 「物価が下がって何が悪いの?」 「デフレで物価が上がらないということは、会社の売上げも増えないので、給料も上がりませんでした。日銀が『異次元緩和』をやってきたこの3年間で、会社はかなり儲かるようになって、春のベースアップ(給料アップ)も復活しました。デフレでなくなれば、給料も毎年上がるようになります。」
「日銀の政策のおかげで、会社は儲かるようになった」と自分の手柄のように読めてしまいますが、大丈夫でしょうか、この文言は。
確かにベアは復活しました。しかし、そんなに楽観視もできないんですよね。
トヨタ自動車の2016年春季労使交渉は15日、月給を一律に上げるベースアップ(ベア)を1500円とすることで決着した。15年実績の4割弱の水準で、トヨタと同額の日立製作所など電機大手は半分となる。3年連続のベア実施だが、新興国経済の失速や円高など景気の不透明感が強く、伸びは小幅にとどまる。デフレ脱却を探る日本経済に影響を与えそうだ。 ベア、トヨタ1500円 ホンダ1100円 電機大手も慎重 :日本経済新聞
ベアは実施してますが、伸びは鈍化しています。首相も、こんなコメントを出すレベル。
首相、春闘ベアに「もう少し力強さ欲しかった」 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
「デフレでなくなれば、給料も毎年上がる」も、謎にリスクをとりに行った発言です。確かにその傾向はあるでしょうが、給料の決定権のない日銀が断定するのはどうなんでしょうね。そもそも、この文章からは、「物価が上がってから給料が上がる」とも読めますが、そうなると物価が上がった瞬間が一番しんどくなってしまわないですかね。
「デフレだと金利も低くなるの?」 「デフレや不況のときに金利を上げてしまうと、もっと景気が悪くなって、給料や物価はもっと下がってしまいます。日本ではデフレの間も失業者が大量にでることはありませんでした。何とかやってこれたのは、金利を低くしていたからです。」
「デフレの間も失業者が大量にでることはありませんでした」、これも危険球です。
一つ前の回答で「15年間デフレだった」と言っているので、就職氷河期やリーマンショック後の話も入っているんでしょう。この間に、就職できなかった人やリストラにあった人、会社が倒産した人はそれなりにいたはずなので、「失業者は大量に出なかった」はないでしょう。反発くらいますよ、これは。
そりゃあ世界的に見れば、失業者は少なめだと言えるかもしれません。欧州の若者の失業率の高さに比べれば、今の日本はマシでしょう。ただ、なんというか、あまり配慮がない言い方だよなぁ、と思いますね。
さらに言うと、「15年間もデフレ」と前の回答で言っていて、ここでは「デフレのときに金利を上げると景気が悪くなる」と回答しています。しかし、2006年と2007年に日銀は利上げをしています。これは「デフレだけど利上げした」ということですかね。これもいまいちでしょう。
「なんとかやってこれたのは、金利を低くしていたから」。金利を低くしていたのはもちろん日銀なので、これも日銀の手柄ってことを言いたいんですかね。今まで「金利が下がる」とか「低くなっている」というように「自然とこうなった」というふうに言っていたのに、突然「低くしていた」と「自分から行動した」という言い方になっています。
「金利を上げた方がみんな利息でお金を使うのに・・・」 「みなさんの家の収入の大部分は給料ですよね。金利を上げて利息収入を増やしても、それで景気が悪くなって、給料が下がったり、職を失っては何もなりません。」 「じゃあどうしたらいいの?」 「デフレから完全に抜け出すしかありません。そのために、今はがまんして金利を低くして、もっと景気を良くして、物価をもう少しだけ上げていくということです。」
「今は我慢して」って余計でしょ。なぜ自分から余計なことをいうのか、意味不明です。
「金利を低くしたら、景気が良くなる」の説明をもっと丁寧にするべきでしょう。でないと、我慢する必要性がわからないんじゃないですかね。
「でも異次元の緩和とかマイナス金利までしなくても・・・」 「15年もデフレが続いたので、みんなそれが当たり前になってしまいました。それを変えるには、思い切った手を使わないとだめです。」
思い切った手がどうやっていい結論につながっていくのか、を書かないのはまずいでしょう。どういう効果があるのかがわからないのに、マイナス金利が必要だと納得させることはできません。
思い切った政策か思い切ってない政策かよりも、効果があるのかないのかの方が重要です。効果がない・小さいとしても、説明上はなんらかのロジックを添えるべきでしょう。
「マイナス金利ってそんなに効果あるの?」 「マイナス金利にしたあと、住宅ローンの金利は下がって、10年固定で借りても1%以下になっています。銀行のローンセンターは大忙しだそうです。会社が借りるときの金利も下がっています。みなさんが家を建てようとしたり、会社が工場やお店を建てたりするときは有利になります。」
この説明をもっと前の方でするべきですよね。なぜこんな最後の方で、忘れたころに言い出すのでしょう。
そもそも日銀が今やりたいことは、世の中にお金が出回るようになって景気がよくなっていくことであって、そのために「金融緩和をしてお金を流しやすくしている」のだと思うんですよね。そういった流れを主軸に説明したほうが、説明しやすいように思います。全体的に、なぜか言い訳先行の回答になっているので、話が変な方向に行ってしまってます。
「銀行のローンセンターは大忙し」。これは銀行にとっていいことなのか悪いことなのかよくわかりません。案件数が増えても利幅が減っているので、忙しくなっただけであまり儲かってない可能性はあります。儲かっていないなら、この書き方もイラッと来る可能性はありますね。利幅を減らした張本人ですから。
「そうすると銀行が損しない?大丈夫?」 「たしかに銀行にとっては、預金金利はマイナスにならないのに、貸出金利は下がるので、その分儲けは少なくなります。」 「でも大丈夫です。日本の金融機関は、リーマンショックでも傷ついていないし、とても健全です。去年もたくさん収益を上げています。日銀の預金でもマイナス金利にするのは一部だけにして、あまり銀行が困らないようにしました。」
「リーマンショックでも傷ついていない」は、確かに他の国の金融機関と比べたらそうだけど、何も比べずに「傷ついてない」は言いすぎでしょう。「傷ついていない」「健全」「たくさん収益」といったワードは、一生懸命やってる銀行をイラッとさせることは間違いありません。
マイナス金利は一部分だけにして、銀行に配慮したよ、というのは正しいですが、なぜこんなに上から目線なんでしょう。配慮したとは言っても収益は下がる政策なわけだし、もっと言い方を考えないと銀行サイドからの反発が来るんじゃないでしょうか。
「本当にそれでデフレから抜け出せるの?」 「みなさん忘れているかもしれませんが、3年前まで物価はマイナスでした。今は、ガソリンのように世界中で下がっているものを除くと、物価は1%以上上がっています。『もうデフレには戻らない』というところまで、あと少しです。この3年間、『異次元緩和』は、たしかに効きました。それをもっと強力にするということです。かならずデフレから抜け出せます。」
「忘れているかもしれませんが」とか言ってますが、忘れてるのはそっちの方だろう、と。3年前に「2年で物価上昇率を2%にする」って言って、今までの緩和をしてきたんじゃないかと。ライザップのように結果にコミットはしたんだけど、結果が実現されなかったからといって特に何もしてないじゃないか、と。
あと、「もうデフレには戻らない」とか言っちゃっていいんでしょうか。「かならずデフレから抜け出せます」も言いすぎです。なぜこんなにリスクをとっているのか意味不明です。
デフレから抜け出せなかったらまずいし、抜け出せても別に「デフレに戻らない」わけではありません。将来、自分の首を絞めるかもしれないことをわざわざ書いてしまうのはよくないです。
「もう1%も物価が上がっているなら、十分でしょう。」 「景気はいい時も悪い時もあるから、ある程度バッファーがないとすぐにデフレになってしまいます。飛行機だって地上ぎりぎりは飛べないでしょう。だから、日本銀行は2%の緩やかな物価上昇を目指しています。この2%というのは、アメリカもヨーロッパも同じで、世界共通です。」
経済環境が全然違うのに、なぜ目標金利だけ世界共通にしないといけないのか。バッファー、つまり、余裕をもっておかないといけないというのは確かにそうですが、その「余裕を持っておくための余裕」がないのが現状です。
2%というのは高すぎです。ここ最近で、消費税要因以外で2%なんて行ったことはありません。最後に2%を超えたのって、バブルのときですよ。そんな水準を目標にしちゃって大丈夫なんでしょうか。
少なくとも、2%が「緩やかな物価上昇」はないでしょう。物価がほとんど上がらないことに慣れ過ぎている日本人からすると、2%の物価上昇は大事件です。
「デフレを脱却すれば預金の利息も増える?」 「デフレから完全に抜け出せば、景気も良くなって、日本経済はもっと元気になります。そうすれば、預金金利も上がります。銀行にとっても、貸出金利を上げても大丈夫になります。これはみんなのためなのです。」
もうこの辺の「これはみんなのためなのです」っていうのがすごく胡散臭すぎる。プラシーボ効果に期待するかのような説得方法です。
ここまで説明になっていない説明が続くと、「説明できません」と説明せざるをえないのかな、と思えてきます。
「話を聞くとわかったような気もするけれど、『マイナス金利』と聞いて不安になってしまったんだよね。」 「『マイナス』という言葉の響きも悪かったかもしれません。それと、今、世界中で金融市場が不安定になっていて、『ニューヨークで株価が下がった』とか『中国から資金が逃げてる』とか、心配なニュースが多い。このイメージと重なったのもあるでしょう。」 「でも、日本の会社は、全体でみると、史上最高の収益になっていて、経済は良い方向に向かっています。それに、この政策はとても強力です。いずれ『プラス』の効果がはっきり出てきて、明るくなってくると思います。」
「マイナス金利」と聞いて不安になる点は、「オレの預金が減ってしまうかもしれない」っていう点でしょうね。世界の金融市場の不安定さは関係なさすぎるでしょう。ここでこんな「世界のマイナスニュース」を入れてくるのって、不安を取り除くどころか、逆に不安をあおってるだけなんじゃないでしょうかね。
これで資料は終わりですが、「史上最高の収益」なのに、なぜマイナス金利にしないといけないかがまったくわかりません。バッファーを作るために、さらに史上最高の収益を求めるということでしょうか。経済もいい方向に向かってるなら、なおさらマイナス金利をやる必要なんてないんじゃないか、という気がしてきます。
全体を読んでみて
おそらく、こういう流れで説明したかったんじゃないでしょうか。まず、預金金利が下がること、給料が上がらないことなどから考えて、これらの原因である「デフレ」はよくないということを理解してもらう。デフレから脱却するための、今までの金融緩和は効果があって、目標達成まであと一歩という状況まで来た、そこで「マイナス金利」を導入して、完全にデフレから脱却するんですよ、と。好意的にとれば、こういう流れで話したかったのではないかと思います。
しかし、なんというか、全体的に言葉の選び方がよくないです。断定しなくていいところで断定したり、いろんなことを日銀の政策の手柄ってことにしていたり。もっと慎重に言葉を選ぶべきだと思うけどなぁ。
いろんな人にケンカを売ってるようにとれるところもよくないでしょう。預金金利の低さに不満を持っている人、失業してしまった人、銀行、いろんな人たちにイラッとするような言い方で説明しているのはまずいと思います。
各回答の整合性がとれていないところもあるし、過去の日銀の政策との整合性もとれていません。流れ自体がおかしいです。墓穴を掘りに行ったり、不必要なことを持ち出しているのもいまいちです。
これを読んでも、マイナス金利の目的も必要性はよくわからないと思います。
どうして、こんなに質の低いコンテンツが公式サイトで公開されたんだろう。
どう書けばよかったのか
まず、「マイナス金利を導入したって本当?」という疑問は、いいと思うんですよね。話の始まり方としては。
その回答としては、「はい、銀行が日銀に預けている預金の一部を、マイナス金利にしました」くらいでしょう。
「マイナス金利になると、私の預金も減ってしまうの?」に対しては、「今のところ、個人の預金金利をマイナスにしている銀行はありません」という感じですかね。これ以上、断定的なことは言えないでしょうね。
で、この後に、「マイナスにならなくても、少しは下がるでしょう?」と聞かれたら、「預金金利は下がりますが、住宅ローンの金利や企業がお金を借りるときの金利も下がります。金利が下がれば、みんなはお金を借りやすくなり、お金を使いやすくなります。これが、マイナス金利を導入した目的です」というような方向に持って行くのがいいと思いますね。
上の文章にあるように、「元々低い金利なんだから、下がっても問題ないよね」とか「デフレだから低金利は仕方ない」とか、そんなの別に言わなくていいと思います。
また、その後の回答で、過去の長いデフレ期間の話を持ち出しています。これは「デフレは悪いことなんだよ」というのを説明するためかもしれませんが、なぜ悪いのかの説明も弱いし、そもそも「なぜデフレはこんなに長く続いたのか」という説明しづらい点も抜けています。過去のデフレなんて振り返る必要はなかったんだと思います。そもそも5分で読める分しか書かないわけなんだし。
ただ、「お金をばらまけば、すぐに物価は上がる」と思っていた人たちの思惑通りとならず、その謎を解明しないまま突っ走っているので、どういう説明をしてもどこかしらでうまくいかなくなるのは仕方ないことだと思います。そこをうまくだましだまし説明しないといけないのに、それが全然できていないですね。
マイナス金利に関する個人的な理解と考え
マイナス金利以前の金融緩和によって、金利は下がり、株は上がり、円は安くなりました。確かに、金融市場には大きく効きました。これは日銀が金融市場にドスドス入ってきたからであり、別に不思議な結果ではありません。日銀が株を買い国債を買っているのだから、その価格が上がるのは自然なことで、円の価値が下がるのも自然です。
一方、実体経済への波及効果は大きくありませんでした。今まで銀行が国債を買っていましたが、日銀も買うようになると、銀行は今までのように国債を買えなくなってしまいます。国債購入に行かなかったお金は、企業への貸出金に流れるのではないか、とおそらく日銀は考えていたのでしょう。でも、その動きは大きくなかった。国債を買わずに余ったお金は、日銀への預金を増やすことになってしまった。この事実に対して、「銀行が頑張っていない」ととらえる人もいれば、「民間企業に資金需要がない」ととらえる人もいます。
こうした資金の動きにしびれを切らし、日銀は「預金をたくさん持っている銀行にペナルティを課す」という強硬手段に出た。これがマイナス金利です。こうすれば強制的に資金が民間企業に流れていくだろう、と。
しかし、そううまくはいかないのではないか、と個人的には思っています。資金が動かないのは「民間企業に資金需要がないから」だと思うためです。今まで銀行は国債を買ったり、日銀への預金を増やしてきましたが、好きでやっているわけではないと思うんですよね。なぜなら、企業にお金を貸す方が儲かるからです。少しでも高い金利で貸したほうがいいはずなのにそうならないのは、「借り手が少ないから」と考えるのが自然でしょう(ここで言う「借り手」とは、お金を借りて将来ちゃんと返せる見込みのある人・企業のことを言ってます)。
実際、金利が低いからといって、住宅ローンを取り組みたくなる人は限られているでしょう。もともと借りるつもりだった人が「今がベストなタイミングだ」といって借りるケースはあっても、住宅ローンを借りる予定のなかった人が低金利を理由に借りるようになるとは思えません。そもそも35年の負債を抱えるリスクを負える人が、今の日本にどれだけいるんでしょう。また、仮に銀行の預金がマイナス金利になっても、最悪、タンス預金が増えるだけで、消費や投資にお金が流れるとは思えません。そう考えると、銀行から実体経済にお金が流れていくのは難しいでしょう。
個人的には、マイナス金利には反対です。みんながお金を借りない原因は、金利ではないと思うからです。賃金を上げてお金を使うようになっていかないと、物価もあがらないし企業の投資意欲もわいてこないと思うんですよね。間をすっぽかして、物価だけ上げるとか、貸出金だけ増やすといったことは難しいんじゃないかと思います。
そもそも、物価上昇率2%という目標は高すぎで、目標からおかしいと思います。物価よりも先に賃金を上げる必要があり、賃金を上げるための政策を充実させていく必要があると思っています。そうしなければ、目標を達成しても誰も喜ばないんじゃないでしょうか。