「内部留保」に関する誤解のようなもの
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「内部留保」の話をするとき、「現金のまま保有している」という前提で話す人がいるけど、なんでだろう。
事業をやるためにはお金が必要で、そのお金は会社のもの(純資産)と会社以外の他人のもの(負債)とにわかれる。事業によって得られた税引き後利益は会社のものなので、純資産にカウントされる。内部留保は、この「過去の利益の蓄積」(=利益剰余金)を指すのが一般的だと思う。
「内部留保」という言葉のイメージから誤解するのかもしれないけど、これは別に「金庫に札束がたまっている」ような状況を指すわけではない。現金のまま放置していることはなくて、普通は新しい工場やインフラに投資したり、金融資産に投資したり、銀行からの借り入れを返済したり、株主への配当にあてたりする。
もちろん、現金のまま保有する部分もあるけど、現金を現金のまま保有していても何も利益を生まないし、何もしないなら事業法人として生きている価値がないので、通常は何かに使う。株主も「何か儲かるものに投資しろ」と言う。現預金は、資金繰り倒産が起こさない程度の金額を持っていれば十分と考えているだろう。
「内部留保を取り崩して、○○しよう」と主張する人は、内部留保が現預金のまま存在しているかのように考えている気がする。すでに何かに使っていて、もう存在しないのに。
「内部留保を使って、賃金アップや雇用創出をしよう」というのも、ハードルが高い。雇用は長期間のキャッシュアウトを確定させるものなので、内部留保のようなストック要素のものにあてるのには向いていない。こんな資金源なら、逆に雇用は不安定化する。
投資を促したり賃金を上昇させるためには、こうしたストックの取り崩しではなくて、フローの要素をいじるべきだと思う。例えば、賃金の上昇幅に応じて法人税を下げるとか、設備投資やインフラ投資などの投資に対して減税を行うとか。
内部留保に課税すれば、フロー・ストックの二重課税になる。また、内部留保の使い道を株主以外が決めるのもやりすぎだろう。外部からは、行動を誘導することしかできなくて、フローへの課税方法をいじるのが一番ベーシックなやり方だと思う。