自然数のn乗の第n階差はn!(定数)になる話
👜
当ブログの読者の方から、おもしろいツイートがあるよ、と教えてもらいました。
1〜9の5乗の差を5回積み上げていくと全部120になるという発見だって。何乗にしてもそれと同じだけ積めば同じ数字が並ぶのではと仮説を立ててるらしい。 pic.twitter.com/jboYnoYrCN
— なないお (@Nanaio627) 2016年12月26日
なるほど。これを小学生が自力で見つけるとはすごい。5乗を計算する時点で普通は挫折するし、その階差を5回もとるなんて普通の人なら投げ出します。それを自主的にやって、しかも法則を見つけるなんて。低次から推測したにしてもすごいなぁ。
一般的に、自然数の $n$ 乗の第 $n$ 階差( $n$ 回階差をとったもの)は、 $n!$ になります。証明に使うものは、二項定理と数学的帰納法です。
$k$ を自然数とし、 $(k+1)^n-k^n$ を考えます。二項定理から、この式は $n-1$ 次の式になり、最高次数の係数は $n$ になることがわかります。階差をとると「次数が1つ下がること」「係数が、べき乗倍されること」から、これを全部で $n$ 回繰り返せば $n!$ となることがわかります。最後の式には $k$ が現れず、元のべき数 $n$ のみに依存する定数となります。この後半部分の「繰り返し」の部分を、数学的帰納法を使って真面目に書けば、証明になります。
階差で考えずに微分を持ち出すと、もう少し直感的に理解できます。 $x^n$ を $n$ 回微分すると $n!$ になることは簡単に計算できます。「自然数の $n$ 乗の第 $n$ 階差」の話は、本質的にはこれと同じような計算をしています。
この話題は、高校の数列の分野と関わっています。2乗や3乗の和の公式の導出で、「自然数の $n$ 乗の(第1)階差数列」が出てきます(第n階差はさすがに出ないですが)。また、この導出を一般化した内容が昔の東大後期の問題で出たことがあります(参考:東京大学 理系 2006年度後期 第3問 解説)。
高校数学を学ぶと、いろんな見方のできる話題ですね。