「ゼロ・トゥ・ワン」を読んで
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ピーター・ティールの「ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか」を読みました。
著者は、オンライン決済サービス・ペイパルを共同創業して会長兼CEOに就任した人です。また、フェイスブックをはじめ多くの企業への投資もしています。そんな彼がスタンフォード大学で起業に関する講義を行い、その内容がまとめられて、この本「ゼロ・トゥ・ワン」が誕生しました。
競争の不毛さに疲れた若いころの経験から、競争のない市場で独占を築くことの重要性を、著者は主張します。そして、そんな市場を見つけるために、「賛成する人がほとんどいない、大切な真実」(22ページ)を考えるべきだ、と。それはよくある批判ではなく、みんなが常識だと思って深く考えていない隠れた真実を指しています。もちろん簡単には見つかりませんし、簡単でないことは著者も認めていますが、競争のない市場を探すには避けられません。
独占を築くためには、大きな市場に莫大なコストをかけて進出しなければいけないと思う人がいるかもしれませんが、本ではこうした行動は否定されています。まずは小さな市場から進出して独占すべきだ、と。実際、ペイパルはebayというオークションサイトでの決済にターゲットを絞っていました(82ページ)。「現在流行っている大きい市場を狙い、他社の商品より少しいいものを出せば、シェアは数%とれるだろう」といった発想は、「あいまいな楽観主義」(98ページ)であり、こうした起業は失敗すると指摘しています。
また、本では販売の重要性も指摘しており、ターゲット層に応じてどう売るかが解説されています(11章)。IT系の企業では「いいものを作れば自然と売れるはず」という発想になることが多いですが、この考えも本では明確に否定されています。
本の中に答えはありませんが、考えるための問いはたくさんあります。どの問いも、答えを出すのはハードルが高いです。しかし、起業で成功するなら、確かにこれらの問いに答えを出せないとダメだろうな、と思わせる内容でした。
この本に関連して、ほぼ日刊イトイ新聞での特集を見つけました。気になる人は、こちらもぜひ。