今日も8時間睡眠
888文字のブログです

靴の箱

この前、近所の靴屋に行って革靴を買ったら、店員に「箱は要りますか?」と聞かれたんだけど、「箱がなくてどうやって持って帰るんだ?」と考え、一瞬、買った靴を手に持ったまま帰る場面を想像して「いや、さすがにそれはない」と即否定、別パターンとして、「買った服をこのまま着て帰ります」の靴バージョンも思いついたけど、それだと新たに「履いてきた靴をどうするんだ」問題が出てきて、やはり履いてきた靴を手に持ったまま帰る場面が浮かんできので、「いやだから、それはないだろう」と再び否定、ジャケットを買ってそのまま着て帰るのとはわけが違うし、履いてきた靴をその場で捨てるのも違う気がして、結局、「箱は要るだろう、箱なしってどういう持ち帰り方を想定してるのかな」と思って、店員に聞き返してみたところ、「箱をもらっても邪魔だから、紙袋に入れてほしい、っていうお客さんがいるんですよ」と聞いて、「あぁなるほど、紙袋か、さすがに靴を裸で持って帰ることはないよな」と思い直しつつ、というか、よく考えたら、たしかに靴を入れる箱って、家に持って帰るまでの間はあったほうがいいかもしれないけど、この靴屋から僕んちまでは数分であり、その数分で形が崩れることはないだろうし、帰宅して靴を出した後に、それ以降、箱を使う場面があるかというと、特別、靴に思い入れもなく、「履きつぶれるまで履く、履きつぶれたら買う」を繰り返す僕にとっては、メルカリで売ったりするために箱を置いておく必要もなく、当面引っ越しをする予定もないわけで、家に箱を置いていても邪魔なだけだという気持ちが強くなってきて、それどころか、捨てるときにも分解しなくちゃいけないし、もらわないに越したことはないなという結論になりつつあり、ほんの数秒前まで「箱は要るだろう」と思っていたのに、すっかり「箱なんて要らないだろう」に寝返ってしまった僕は、革靴の入った紙袋を持って帰宅し、革靴を取り出しながら、「なんで靴を手に持ったまま帰る場面ばかり思い浮かんだろうな」と「なんで靴を買うときに今まで箱に入ってたんだろうな」ということに思いをはせつつ、紙袋を畳んだ。

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