どう見ても難化! 新形式TOEICは2016年5月にどこがどう変わるかまとめてみた
新記事書きました:【長文】旧TOEICで使ってたテクニックや戦略、時効なので公開します
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先日、TOEICを運営しているETSが、「2016年5月に実施するTOEICテストから、出題形式を変更する」という発表を行いました。
TOEIC|インフォメーション|2015年度|TOEICテスト 出題形式一部変更について
TOEIC|プレスリリース|2015年度|ETSは、TOEICテストの出題形式を2016年5月に変更します
今日は、この変更内容について細かく見ていきたいと思います。個人的には、どう見ても難化するようにしか見えないんですけどね。
難易度の高い問題が増加! 各パートの問題数はこう変わる
現在、TOEICは7つのパートにわかれています。前半のリスニングセクションは、写真問題、応答問題、会話問題、説明文問題の4つで、変更後もこの構成は変わりません。しかし、各パートの問題数は、それぞれ次のように変わります。
パート | 変更前問題数 | 変更後 |
---|---|---|
1 | 10 | 6 (-4) |
2 | 30 | 25 (-5) |
3 | 30 | 39 (+9) |
4 | 30 | 30 |
合計 | 100 | 100 |
比較的点数がとりやすいと言われているパート1(写真問題)とパート2(応答問題)が減りました。一方、パート3(会話問題)が増えました。会話問題は、「3人での会話」という新しいスタイルが増えるなど、変更点が多いです。あとで、パート別の変更点の箇所で詳しく見ていきましょう。
次に、リーディングセクションです。リーディングは、短文穴埋め、長文穴埋め、長文読解の3つのパートから構成されています。変更後もこの構成は変わりません。しかし、各パートの問題数は、それぞれ次のように変更になります。
パート | 変更前問題数 | 変更後 |
---|---|---|
5 | 40 | 30 (-10) |
6 | 12 | 16 (+4) |
7 | 48 | 54 (+6) |
合計 | 100 | 100 |
比較的時間をかけずに解けるパート5(短文穴埋め)の問題数が減り、長文穴埋め・長文読解が増えました。長文読解については、今まで最後のほうにダブルパッセージ(2つの文書)がありましたが、新しくトリプルパッセージ(3つの文書)が追加されます。これらの話も、あとで詳しく見ていきましょう。
リスニング、リーディング両方とも、簡単な問題が減り、難しい問題・時間がかかる問題が増える変更になりました。特に、リーディングの「時間との戦い」はより厳しくなりそうです。パート5の1問とパート7の1問は、解くのに必要な時間が全く異なります。合計問題数が同じでも、新形式のレベルは上がるでしょう。今のリーディングテストでも最後までたどりつけない人がたくさんいるのに、さらに時間が足りないほうへ変更されることとなってしまいました。しかも、出題形式変更後もリーディングの時間は75分で変わりません。
この問題数の変更だけを見ても、受験する人にとっては、かなりしんどい変更ではないかと思います。
それぞれのパートについて、細かな変更点を見ていきます
先ほどは問題数についてみてみましたが、ここからは各パートの問題の変更点を見ていきます。ちなみに、変更後の問題例は、新形式の問題について(PDFファイル)で見ることができます。この問題例を参考にしながら、説明していきます。
発言が短くやり取りの多い会話問題が登場
パート3の会話問題では、今まではA⇒B⇒Aや、A⇒B⇒A⇒Bの2往復以内の会話が基本でした。しかし、今後は、「各発言は短いが、やり取りが多い会話」が登場します。
例えば、上のPDFの例文には、「Really?」だけで終わる発言があります。今までは、こんな短さで次の人に発言権が移るということはありませんでした。また、6回発言、8回発言といった、今までの4回以内の発言よりも多い会話が例として挙がっています。
一人一人の発言が短くなるため、聞き取りやすくなるかもしれません。しかし、会話数が増えると会話のレパートリーも増えるため、聞き逃したときに内容を推測するのが難しくなりそうです。
また、いつまで会話が続くのかがわからなくなります。リスニングが苦手な人には、集中力を切らさずに聞き続けるのが大変だと思います。今までのように「2往復で終わりだな」と予想することはできず、「いつまで聞けばいいのかわからない」となるので、精神的に疲れやすくなるでしょう。
3人で会話をする問題が登場
パート3は、2人の会話を聞いて答える問題でしたが、新形式では3人の会話を聞いて答える問題も登場します。
これは、実際に聞いてみないと難しさはわからないですね。上のPDFにある問題例には、男性2人と女性1人の会話があります。さらに、「この男性”たち”は・・・」という設問があります。男2人の声を聞き分けて答えないといけない問題は、例としては挙がっていません。そういった問題が出るかどうかわかりませんが、もし出てきたらやっかいですね。
なお、3人で会話する問題の前には、音声で次のようなアナウンスが流れるようです。
Questions ○ through ○ refer to the following conversation with three speakers.
2人のときは「conversation」のあとは何もなしで、3人のときは「with three speakers」と言ってくれるようですね。会話の直前にしか判明しないので、大した情報にはならないかもしれませんが。
設問を見ると、”men”とか”women”と書かれているはずなので、そこからも「この問題は3人の会話だな」というのがわかるかもしれません。会話を聞くもっと前に見れる分、こっちのほうがヒント(というか、心の準備)として使えそうです。
音の省略(エリジオン)を含む会話が登場
音の省略(エリジオン)を含む会話が流れるようになります。例として挙がっているのは、「going to ⇒ gonna」です。
個人的には、これはエリジオンなのか疑問ですが(どちらかというと”口語表現”?)、この例に関連するものとして、次のようなものも出てくる可能性があるでしょう。
元の言葉 | 変わった後 |
---|---|
want to | wanna |
got to | gotta |
have to | hafta |
has to | hasta |
don’t know | dunno |
上で挙げたもの以外に、もっと砕けた表現も出てくるかもしれません。どこまで砕けた表現が出てくるかは、公式問題集や実際のテストを確認してみないといけませんね。
不完全な文(フラグメント)を含む会話が登場
主語と動詞の入った文ではなく、文の一部分だけ、という発言を含んだ会話が流れます。
日本語の日常会話でも、単語+アルファで会話するシーンがあると思いますが、それの英語版だと考えられます(問題例での該当箇所は見つけられませんでした)。文脈をおさえられていれば、主語・動詞を補って聞き取れるはず、という出題意図でしょう。
PDFの問題例7-9番を見ると、だいぶカジュアルな会話になっています。これからのテストでは、フラグメントをはじめ、より口語的な会話が増えるのだろう、と予想できます。
会話やトークを聞き、図を見て答える問題が登場
パート3やパート4の問題で、図などを見て答える問題が登場します。
パート3の問題例に、次のような問題があります。問題用紙にスクリーンのサイズと値段の表が書かれています。ノートPCを買うために男女が話し合っている会話を聞き、問題用紙に書かれた表を見て解答する、という問題です。
また、パート4の問題例に、次のような問題があります。問題用紙にセミナーのプログラムが書かれています。セミナーの司会者の話を聞いて、セミナーの最後の登壇者はだれか答える問題です。ちなみに、プログラムにはこういう内容が書かれています。
登壇者 | 時間 |
---|---|
Aさん | ○時から○時 |
Bさん | ○時から○時 |
Cさん | ○時から○時 |
Dさん | ○時から○時 |
司会者から「セミナーの最後の2人の順番が入れかわります」という変更のアナウンスがあるので、正解はCさんとなります。問題用紙の通りにDさんと答えると間違えてしまう、という問題です。
会話を聞きながら、設問を読みながら、図や表を見ながら、選択肢を選ぶなんてできるのでしょうか。処理をしないといけない内容が多すぎです。しかも、不要な情報がどんどん入ってくるので、パンクしそうです。今まで以上に神経をすり減らすことになりそうですね。
なお、図や表を見て答える問題は、直前に次のようなアナウンスが流れるようになります。
パート3の例: Questions ○ through ○ refer to the following conversation and list.
パート4の例: Questions ○ through ○ refer to the following talk and program.
まぁ、問題文に表などが掲載されているので、「これは、表を見て答える問題だな」というのは設問を見た時点でわかりますけどね。
会話やトークの中で、話し手の暗示意図を問う問題が登場
パート3やパート4で、話し手が暗示している意図を問う問題が登場します。
パート3での問題例の中で、会話中に出てきた「信じられない!」という女性の発言に対し、なぜこんな発言をしたか、を問う問題が出題されています。
「信じられない!」という発言は、いろんな場面で出てきます。断固反対のときも使うし、がっかりしたときにも使うでしょう。この問題例での正解は「驚いたから」ですが、これは会話の流れから考えるしかありません。ここの部分だけを聞いてもわかりません。
このような、話し手が暗示している意図を問う問題が出てきます。今までも「発言」が何を意味しているか、を問う問題はありました。新しく追加される「発言した意図を問う問題」は、会話の流れをより深くとらえる必要があり、難易度の高い問題だといえるでしょう。
長文穴埋めの設問数が増加
ここからはリーディングセクションに関する変更点です。
パート6の長文穴埋め問題ですが、今は一つの長文に対し、設問が3つです。それが4つになります。つまり、こう変わります。
現行:長文の数が4、それぞれの設問数が3 変更後:長文の数が4、それぞれの設問数が4
長文の数が増えるよりはマシですね。
長文穴埋めで、一文を埋める設問が登場
今までのパート6の長文穴埋めは、単語や句を埋める問題ばかりでした。今後は、これに加え、空欄に一つの文を埋める設問が加わります。
一見すると、あまり大きな変更ではないように思います。しかし、「一つの文を埋める」ということは、各選択肢の長さが増えるということです。今までよりも問題を解くのに時間がかかってしまう原因となるでしょう。
長文読解に、複数人がやり取りを行うテキストが登場
パート7の長文読解に、テキストメッセージやチャット形式で、複数人がやり取りを行うテキストが登場します。
問題例では、2人がチャットしている画面を見て答える問題が挙げられています。
挙げられている例は2人のやり取りですが、これが3人以上のやり取りだと話が複雑になり、問題の難易度は上がってくるでしょう。発言内容だけでなく、誰がどの発言をしたかを把握したうえで問題を解かないといけないので、3人以上のやり取りが出てくるようだと、かなりてこずりそうです。
また、このチャット問題では、どこまで砕けた表現が出題されるかも不明です。問題例ではそこまで砕けた表現は使われていませんが、「Sure thing」といった口語表現が使われています。こうしたものも、覚えていかないといけないでしょうね。
長文読解に、トリプルパッセージが登場
パート7の後半では、今まで2つの文書(ダブルパッセージ)を読んで答える問題が出ていました。ここに、新しく、3つの文書を読んで答える、トリプルパッセージの問題が登場します。リーディングの変更の中では、一番重たい変更でしょう。
パート7の問題数をパッセージ別に分けると、変更内容は次のようになります。
パッセージ | 現行 | 変更後 |
---|---|---|
シングル | 9セット (小問が2-5個) |
10セット (小問が2-4個) |
ダブル | 4セット (小問が5個) |
2セット (小問が5個) |
トリプル | - | 3セット (小問が5個) |
合計 | 48問 | 54問 |
ただでさえ、ダブルパッセージがきついというのに、トリプルパッセージですか。泣けます。最後の最後にこんなに大量の文章を読ませるなんて、あまりにも残酷です。しかも、3セットもあるなんて。
1つの文書、複数の文書、それぞれ1つずつ増えています。時間との戦いが激しくなります。
より日常会話に近い話し方になる?
PDFで配布されたリスニングの問題例を見てみると、「… ahm …」とか「… ah …」といった、言葉につまる部分が見受けられます。
今までは、商品の宣伝や空港のアナウンスなどの、言葉につまらない流れるような話し方ばかりでした。しかし、これからは、ちょっと考えたり、言い直したりするような、より日常会話に近い、自然な話し方になるのかもしれません。
長文読解に、一文を挿入する問題が登場?
PDFで配布されたリーディングの問題例を見てみると、問題149-152の例も気になります。
そこには、「問題文の1~4の箇所のうち、次の一文を挿入するのに最も適切な箇所はどれ?」という問題が載っています。現代文の試験に出てきそうな問題ですが、これは目新しい問題ですね。
この問題を一つ解くには結構な範囲の文章を読む必要が出てくるので、時間がかかります。こうした「一文挿入問題」も追加されるとなると、相当時間が足りなくなってしまうのではないかと思います。
逆に、変更のない点
ここまでは、変更点を見てきましたが、従来と変わらない点も簡単に見ていきましょう。
リスニングは、会話問題が増えたものの、時間は45分間と変わりません。また、リーディングも、時間は従来通り75分です。2時間で200問、休憩なしです。解答方法や、スコアの点数表記も変わりませんし、受験料も変わりません。
また、以前からリスニングでの発音には、米国・英国。カナダ・オーストラリアの4か国の発音が使われていますが、これも変更はありません。
リーディングの時間が増えないというのがつらいですね。長文読解、しかも、トリプルパッセージが登場するとなると、時間が足りなくなるのは簡単に予想できます。今まで以上に、読む速さを意識しないといけなくなったと思います。
そもそも、どうして形式変更なんてするんでしょう?
どの変更も、対応するのは大変そうです。では、そもそも、なぜTOEICの出題形式を変更するのでしょう。変更理由について、TOEICを運営しているETSは、プレスリリースで次のように説明しています。
<背景>
(中略)
変更の理由についてETSのTOEICプログラム・エグゼクティブディレクターFeng Yu氏は、次のように述べています。
「英語の使い方は日々進化、変化しています。その変化に合わせて、テスト問題も進化、変化させる必要があります。TOEICテストが、現在使われている英語を反映し、そして受験者が必要とする英語のスキルを確実に測定するテストであるために、ETSでは、この度TOEICテストの出題形式を一部変更してまいります」
言わんとしていることはわからなくはないです。例えば、海外との電話会議のことを考えれば、3人以上の会話を聞き取らないといけないケースも出てきます。セミナーに参加すれば、英語で説明を聞きながら、資料やパワポをみることもあります。より口語的な会話を聞かないといけない、という場面も増えるでしょう。そう考えると、リスニングの変更意図も理解できます。
リーディングについても、同様です。少し前からメールの画面を使った問題は多かったですが、これは業務でメールのやり取りが増えていることを反映したものでしょう。最近は、仕事でチャットを使うケースも増えています。メールのような長文のやり取り以外にも、短めの文章をたくさんやりとりしたり、3人以上の人がチャットに参加するというケースもあるでしょう。リーディングの変更点も、「現在使われている英語の変化に合わせた」と言われれば、「うーん、まぁそうなのかもなぁ」という気もします。
しかし、やはり個人的には、難易度を上げるための変更にしか感じられません。
変更による影響はないの?
TOEICを運営しているETSは、今回のTOEICの出題変更による影響について、次のように発表しています。
<背景>
(中略)
出題形式の一部は変更されますが、調査を繰り返し実施し、TOEICスコアの持つ意味が、出題形式の変更前後で変わらないことが検証されています。また、テストの難易度やテストの実施時間にも変更はありません。
(中略)<変更による影響>
出題形式の変更後もTOEICテストは、日常生活および職場環境で使用される英語力を評価する、公正かつ妥当な、そして信頼できるテストであることに変わりはありません。TOEICテストの全体的なクオリティや難易度、テストの実施方法にも変更はありません。
公式認定証のリスニングのAbilities Measured(項目別正答率)に、「フレーズや文から、話し手の目的や暗示されている意味が理解できる」という項目が新たに追加されます。これ以外には公式認定証に変更はありません。新たに追加される項目は、受験者とスコア利用者に受験者の能力に関する更なる情報を提供するものとなりますが、総合的なスコアには影響しません。そして、今まで通りスコア同士を比較することも可能です。
重要なのは、「難易度もスコアも変わらない」というところでしょう。ここの部分については、Q&Aの項目を設けてさらに説明されています。
Q. 変更後のTOEICテストの600点と現行のTOEICテストの600点は同じレベルを意味しますか?
A. 変更後のTOEICテストの600点と現行のTOEICテストの600点は同じレベルを意味します。
変更後のTOEICテストは従来のテストと難易度、テストの長さ、出題数、評価スケール(10点~990点)、そしてクオリティに変化が出ないよう、ETSのテスト開発の専門家により設計されました。変更後のスコアは現行のスコアと比較できます。Q. 変更後のTOEICテストは現行のTOEICテストより難しくなってしまうのではないですか?
A. 変更後のテストと現行のテストの難易度は変わりません。テストの難易度に変化が生じないよう、ETSのテスト開発の専門家により調査、検証を重ね設計されています。
TOEIC|インフォメーション|2015年度|TOEICテスト 出題形式一部変更について|TOEICテスト 新形式の問題 Q&A
以上のことを合わせると、「英語の使われ方の変化に応じて、テストの形式を変更するだけ。クオリティや難易度に変更はなく、スコアの意味も変わらない」ということのようです。
変更に関して、個人的に思うこと
上のように「形式変更後も難易度やスコアは変わらない」と書かれてはいます。しかし、リスニングの写真問題や応答問題、リーディングの短文穴埋めといった、「得点の稼ぎやすい」「勉強すれば点数が上がりやすい」「すぐに解きやすい」問題が減ったことは難易度の上昇と言えるでしょう。また、会話問題や長文読解の変更により、難しい問題がさらに難しく、時間のかかる問題がさらに時間を必要とするようになり、この点でも難易度は上がるように感じられます。
こうした変更を行った後も難易度が変わらない、という話であれば、テキストの量が減ったり、使用する単語が少し易しくなる、といった変更がないといけないでしょう。どういった内容になるかは、受けてみるまではわかりません。しかし、新形式に慣れるまでの間は、多くの人はTOEICの点数が下がってしまうのではないでしょうか。
おそらく「現実の英語の使われ方に合わせて出題形式を変える」というのは建前で、「テクニックだけで点数が取れてしまう要素を減らしたい」というのが正直なところでしょう。僕自身、今の自分のTOEICの点数が、自分の真の英語力を表しているようには思いません。高めに出ていると思います。
「テストvs解法テクニック」というのは、終わらないイタチごっこです。しかし、さすがに今回の変更はテクニックだけで乗り切れるものではないと思います。あぁ、もうこれは英語を勉強するしか!