はてなブックマークは、フロー要素が強すぎる。ブックマークなのに。
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今日は、僕もヘビーに使っている「はてなブックマーク」について、いろいろと書いていきます。自分でブックマークをつける、他人のブックマークを見る、自分のサイトにブックマークがつく、いろんな場面で思ったことを長々と書いていきたいと思います。その中で、問題だと思っていることや嫌だなと思っていること、また、こうなればいいのにな、と思うことも書いていきます。
文字ばっかりだと目がつらいので、随所にFlickrからひっぱてきた画像をはさんでいます。画像と本文は関係ないです。
はてなブックマークとは何か
はてなブックマークの話をする前に、関連するものを振り返っていきましょう。
ブックマークとは何か
ウェブの世界での「ブックマーク」とは、ブラウザにウェブサイトのURLを登録しておく機能のことです。「このサイトを後で使おう」「このページを後で読み返そう」などと思って、登録します。たいていのブラウザには、このブックマーク機能がついています。
一度読んだだけで満足するページには、ブックマークをつけることはないでしょう。ブックマークは、後で見返すことを前提に、サイトのURLをストックするという行為です。
オンラインブックマークとは何か
ブラウザのブックマーク機能を使っていると、不便に思う場面があります。ブックマークしたサイトを別のブラウザで見たい場合などです。
例えば、家でネットサーフィンをしているときに仕事で使えそうなページを発見したとか、仕事中に「家に帰ってじっくり読みたい」と思うページを見つけた、という経験があると思います。「登録したい」と思った場所と「読み返したい」と思った場所が違う場合には、ブラウザにデータを保存してもあまり意味がありません。
そこで、ブックマークをオンラインで管理する、という発想が生まれます。後で見返したいサイトをオンライン上に保存すれば、場所を気にせずにサイトをストックできるし、ストックしたサイトをどのブラウザからでも参照できるようになります。PCのデータが消えてもブックマークのデータは消えないし、ブラウザの乗り換え、PCの引っ越しの際にも便利です。
なお、オンラインブックマークサービスはドットコムバブルの前から存在していましたが、今も昔も、オンラインブックマークだけのサービスで有名なものはありません。たいていは、次に説明する「ソーシャルブックマーク」の中に含まれています。
ソーシャルブックマークとは何か
ソーシャルブックマークとは、自分のブックマークをオンライン上で公開し、他人と共有することができるサービスです。
例えば、「プログラミングを勉強したいけど、いいサイトを見つけるのは大変だ」と思っている人がいたとします。こういう人が「プログラミングの勉強に適した優良なサイトをたくさんブックマークする人」に出会えれば、その人の挙動を追うだけで有益な情報が入ってきます。
また、みんながいろんなサイトをタグで分類することで、興味のありそうなサイトを見つけやすくなります。みんなのブックマークの多さを、サイトの優良さを示す参考指標として使うこともできます。
こうしたソーシャルブックマークサービスは、2003年、海外のdel.icio.us(今のDelicious)を皮切りに、多くの企業が参入しました。はてなブックマークも、このソーシャルブックマークサービスの1つで、2005年にサービスを開始しました。
ソーシャルブックマークサービスが出てきた当初は、まだ新しい概念であった「タグ」でウェブサイトを分類・検索・管理できるとか、集合知だとかいろいろ言われていて、Web2.0を代表するサービスの1つとして挙げる人もいました。
はてなブックマークとは
はてなブックマークとは、さきほど書いた「ソーシャルブックマーク」の1つです。ただ、普通のソーシャルブックマークと異なる点がいくつかあります。
1つは、コメント機能です。コメント(上限100字)は、基本的に公開されます。あるウェブページについたコメントを一覧表示すれば、一行掲示板のように見ることができます。
また、ニュースサイトとしてのサービスを提供している点も異なります。「短時間で多くの人がブックマークを付けた記事は優良である」と判断し、それらを「人気エントリー」として公開しています。ブックマーク機能は使わずに、ニュースサイトとして使うこともできます。
はてなブログとの連携の強さも特徴的です。他にもいろいろありますが、主要な違いはこういったものでしょう。これらの違いが強みでもあり、問題の原因でもある、と個人的には思っています。
はてブ以外のブックマークサービスは?
国内の他のソーシャルブックマークは、どんどん終了しています。2011年2月にFC2ソーシャルブックマークが終了、2011年3月にgooブックマークと@niftyクリップが終了、2012年10月にlivedoor クリップが終了、2014年9月にBuzzurlが終了、2016年2月にはYahoo!ブックマークですら終了(予定)です。
こういうサービスは、ユーザー数が多くないと生き残れないんでしょうけど、はてなはその中でも大手相手に頑張って生き残ったんですね。国内のライバルはほぼいなくなりました。これからも新規参入者は出てこないでしょう。今から参入してユーザーを獲得できるとはとても思えません。
なお、海外ではすでに流行っていないようなので、海外からのライバルも来ないでしょう。ということで、国内のソーシャルブックマークサービス業界は、はてなブックマーク1強です。
はてブに対し、一人のユーザーとして思うこと
ここからは、一人のユーザーとしての視点から、はてブを見ていきます。昔はストック的に、今はフロー的に使っている、という話です。
はてブをオンラインブックマークとして使っていた頃
僕がはてブを使っていた当初は、はてブを「オンラインブックマーク」として使っていました。つまり、ブックマークをオンラインで管理することが目的で、他の人に見せることを前提としない使い方です。
タグは使っていましたが、コメント機能はほとんど使っていませんでした。コメントは、記事のタイトルだけでは検索しづらいときに、「将来自分が検索して見つけやすいことを書く」スペースとして使っていました。
こんなのは公開しても意味がないので、ずっと非公開にしていました。ブックマークしたサイトは、自分が後で読み返すために使う、つまり、「ストック的」な使い方をしていました。
はてブをコメントツールとして使っている今
しかし、最近は完全に使い方が変わりました。
サイトにツッコんだり、斬ってみたり、反論してみたり、助言してみたり、ボケてみたり。ブックマークが主ではなく、コメントが主、という使い方です。自分ではなく、他人が見ることを前提としたコメントをするようになりました。
こうした使い方に変わった結果、コメント目的でつけたはてブは、二度と見返すことのないサイトへのブックマークばかりとなりました。読んでコメントしたらそれでおしまいという、「フロー的」な使い方に変わってしまいました。
一人のはてブユーザーとして思うこと
現在の僕は、読み返したい記事を保存するという「ストック型」、コメントはするけど一度読んだら終わりという「フロー型」の両方の使い方をしていて、両者をサブアカウントで使い分けています。
ストックメインのアカウントでは、昔、非公開で使っていたなごりで、基本無言ブクマ(コメントなしのブクマ)しかしません。一方、コメント目的のアカウントでは、無言ブクマをすることはほぼありません。
今のはてブにも、ストックメインで使っている人、コメントメインで使っている人が混在しているように思います。しかし、両者の使い方は全く異なるので、サービスとして分けたほうがいい気がします。これについては、またあとで書きます。
はてブに対し、一人のサイト運営者として思うこと
ここからは、サイト運営者の視点から、はてブを見ていきます。
「はてなブックマーク」の登場により、みんなのブックマークが見えるようになりました。また、短時間でたくさんのはてブがついた記事は、「人気エントリー」(hotentry、ホッテントリとも呼ばれる)として公開されるようになりました。
ソーシャルブックマークサービスとして大きくなったはてブは、ニュースサイトとしても存在感を増し、アクセスの面でも大きな力を持つようになりました。このブログでも人気エントリーに載った記事がいくつかありますが、アクセスが激増しました(しかし、影響は数日で消えます)。
サイト運営者なら、多くの人にサイトを見てほしいという気持ちがあるはずです。はてブの影響力が増してきたため、多くのサイト運営者にとって、はてブは無視できない存在になっていきました。しかし、その結果、質の高くない記事が目立つようになるという問題も増えてきました。以下では、こうなった原因を、はてブの機能とからめて考えていきます。
はてブと炎上
人気エントリーとして取り上げられるサイトの中には、炎上しているものがあります。
間違っていることを書いていたり、倫理的に問題のあることが書かれているサイトに対して、みんなが批判的なコメントをするケースです。
誤解を受けやすいタイトル、記事の中身と合っていないタイトルの場合も、よく炎上が起こります。記事の中で解説や釈明があったとしても、タイトルだけを読んで批判コメントを残す人はいます。また、みんなが批判しているから、自分も批判するという人もいます。
これらのケースでは、みんなはコメントをしたいのであって、ブックマークをしたいわけではありません。しかし、コメントとブックマークが一体となっているので、コメントをするとブックマークがつく、たくさんブックマークがつくと人気エントリーと解釈される、という流れになります。そうなるとさらに注目され、ますます批判コメントがつき、炎上が悪化していくことになります。
こうした手法を逆手にとる人もいます。あおったり、間違ってることやトンチンカンなことをわざと書く、そして、あえて批判的なコメントをたくさん集めて、人気エントリーにのし上がっていく。個人的には、こんな手法で集めるアクセスには価値がない気がしますが、そうした手法をとる人はいます。
これらの問題は、「コメントとブックマークが分離されていないこと」が原因です。「コメントが集まること」が「ブックマークが集まること」と同じになってしまっているために起こっています。
はてブの人気エントリーは「注目が集まっている記事」ではありますが、それがポジティブな注目かネガティブな注目かは区別できません。言うなれば、数字の絶対値は判別できるけど、符号は判別できない、ということです。
「質の高い記事を見つけたい」という人からすると、炎上記事のような「コメント目的でつけられたブックマーク」はノイズになることが多いです。記事を書いた人が炎上を意図していたかどうかにかかわらず、炎上した記事は人気エントリーとして取り上げられ、注目が集まってしまいます。しかし、炎上するような記事は質が低いことが多く、「人気エントリーだから見てみたけど、しょうもなかった」、「最近のはてブには、質の低い記事が増えた」という意見につながってしまいます。
はてブと互助会
ブログの記事が「人気エントリー」に入る他の経路に、「互助会」というのもあります。
短時間でたくさんのブクマがつくと、たいていの場合、人気エントリーに入ることができます。なので、数人で協力してはてブをつけあえば、人気エントリーに入る可能性が高まります。こうした「互助会」という手法を採用している人たちもいます。また、ひどくなると、お金を払って多くの人にはてブをつけてもらっている人もいます。
はてなは、これらの行為をスパム行為として禁止しています。
以下のようなご利用をスパム行為として禁止しております。
(中略)
複数のアカウントで共謀して同一のURLをブックマークする行為
(中略)
ブックマークの追加に金銭や物品などの報酬や特典を与える行為
しかし、人気エントリーに入るインセンティブが大きくなってしまった以上、「スパム行為はしないでね」と言うだけでは弱いでしょう。理想的なことを言えば、上のような「みんなで一斉にはてブをつける行為」と「人気エントリー」との関係性を弱めたり無くしていく必要があると思います。これについては、また最後で書きます。
互助会関連については、「被評価者が、評価者でもある」という点が問題の根源でしょう。自分や自分の身内がほめることで、自分の作ったサイトの評価が上がってしまう。これも、はてブに質の低い記事が増える原因につながっていくと思います。
なお、この互助会の嫌われっぷりは激しく、「無言ブクマ=互助会」と決めつけて叩く人もいます。コメントをメインで使っている人の中には、無言ブクマに否定的な見方をする人がいますが、ストックメインで使っている人もいるわけだし(かつての僕のように)、無言ブクマは通常使用の範囲内でしょう。無言ブクマが互助会のケースはありますが、断定はできません。
はてブとはてなブログ
はてなのサービスに、「はてなブログ」というブログサービスがあります。はてなブログでは、ユーザーがお互いのブログを訪問しあって、はてブコメントをつけあうことがあります。
こうした行為にも否定的な考えを持つ人がいます。はてブコメントをつけあうことは、ブックマークをつけあうことにもなる、これも互助会じゃないか、と。
ただ、ある人が自分のブログを見に来てくれた、だから自分もその人のブログを見に行く、というのは自然な動きです。そのときに、コメントを残すことも自然です。この行為は、はてなブログに限りません。例えば、アメーバブログには「ペタ」という足あとをつける機能がありますが、公式ブログではなんとこんな記述が見られます。
基本的にブログのマナーとして、 読者になってもらったら、自分も読者になったり、 コメントをもらったら、「コメント返し」を、 「ペタ」をつけてもらったら「ペタ返し」をしに行くというマナーがあります
これをマナーと呼ぶことには、少し抵抗はありますが。
コメント返しをするにしても、はてなブログではコメント欄を設けていないユーザーも多く、はてブをコメント機能代わりに使うことはよくあります。そのため、お互いにコメントをつけあった結果、互助会のようになってしまいます。
これはひとつ前に書いた互助会の例に比べると、まろやかな案件です。しかし、人気エントリーの質を下げることには変わりないでしょう。ただ、これはユーザーが悪いというよりも、コメント機能とブックマーク機能がくっついていることが悪いように思います。
一人のサイト運営者として思うこと
もう一度整理します。
ソーシャルブックマークサービスの中で、はてなブックマークだけが生き残った。そして、はてブの人気エントリーに入ればアクセスが激増するくらい、影響力が大きくなってきた。
そうした中、これを悪用する人も増えてきた。コメント機能とブクマ機能が分かれていないことや、自分の身内が自分の評価を上げられることにより、炎上したり談合したりすることで、質の低い記事でも人気エントリーに入ってしまうケースが増えてきた。
こういう問題が起こっているのでしょう。
ユーザーにとっては、質の低い記事がたくさん目に入ってくるのはいいことではありません。また、これは、サイト運営者にとってもいいことではありません。良い記事を書くことよりも、注目を集めることが評価されるなら、やる気もなくなるし、「まじめにやって、はてブの人気エントリーに入ろう」という気もわいてきません。
はてブで質の低い記事が注目されるのは、サイト運営者としても不満ですが、さらに不満なのは、「コンテンツがストック型ではなく、フロー型として消費される要素が強い」点です。
人気エントリーに入っても、注目したから見に来ただけ、一度来たらもう二度と来ない、というケースがすごく多いんですよね。もちろん、このブログを再訪問してもらえないのは、このブログのやり方や質に問題があるからですが、他のサイトでも読者の定着にはあまり役立ってない気がします。
実際、自分がそうだからです。コメント目的ではてブをつけた場合、そのページは1回読めば終了です。読み返すことは、ほとんどありません。だから、このサイトが、はてブ経由で読み返されないのも仕方ありません。
しかし、はてブは「ブックマーク」サービスなんですよね。サイトのURLを登録したい、再訪問したいと思ってはてブをつけるんじゃなかったんだっけ。サイト運営者から見ても、後で見返してくれる人、サイトに再訪問してくれる人が増えたほうがいいはずです。できれば、はてブにはそういう出会いが提供される場であってほしいんですよね。
例えば、グーグルの場合、グーグルが良い記事だと判断すれば、検索結果の上位に表示してくれます。そして、固定客を連れてきてくれます。「前来た人がまた来る」という意味の固定ではなく、「フローを送り続けてくれる」という意味での固定です。グーグルはグーグルで攻略法がいろいろ言われていますが、コンテンツを作る側が「いいものを作ろう」というインセンティブの働きやすい枠組みに改良され続けています。
一方で、はてブの場合はどうでしょうか。人気エントリーに入ったサイトは数日で奥のほうに追いやられ、新しいサイトがまた手前にやって来る。このように、コンテンツはフローとして消費されていきます。
そのため、一度注目されても、すぐに忘れ去られてしまいます。もう一度注目されたければ、また新しく人気エントリーに入るしかありません。しかし、普通に記事を書いても再注目されることは少ないので、炎上商法や互助会などの間違った方法に手を染めやすいのでしょう。そして一度手を出すと、二度と戻れない体に。
はてなからすれば、「サイト運営者のことなんて知らんがな」という感じかもしれませんが、少なくとも質の低い記事を作らせるインセンティブを与える必要はないと思うんですよね。
どうすればよかったのだろう?
最後に、はてブはどうすればよかったのだろう、というのを書いていきたいと思います。なお、これは自分に都合のいい意見であり、実現可能性や他の人の都合なんて考えていない妄想の案です。
おそらく、はてブで見つけたい記事には、2種類あるんだと思います。「質の高い記事」と「話題になっている記事」の2種類です。前者は、ブックマークしたい記事、何度でも読み返したい記事、「ストック型」の記事です。後者は、コメントしたい記事、一度だけ読めば十分な記事、「フロー型」の記事です。
2つの記事の見つけ方は、違うルートになると思います。前者のような「ストック型」の記事を見つけやすくするためには、ユーザーをホワイトリスト化して、彼らのブックマークをもとにカスタマイズしたレコメンドページを作るべきでしょう。自分がブックマークした記事をブックマークしたユーザーや、自分がフォローしているユーザーたちが、新しくブックマークしたサイトをリスト化するページです。「マイホットエントリー」という機能がすでにありますが、あれを充実させることが必要なんじゃないかと思います。
結局、自分にとって価値のない記事を目にするのが不満なんですよね。自分にとって価値のないユーザーたちによる集合知に、意味なんてなかったわけです。こうすれば、談合や炎上とは無縁になります。
一方、後者のような「フロー型」の記事を見つけやすくするためには、コメントの多くついた記事をもとにリストを作ります。話題にしている人をあらかじめ制限するのは意味がないので、ここではホワイトリストは要らないでしょう。
ブックマークに着目すれば、自分向けのメモ機能は必要でも、他人に見えるコメント機能は不要だと思います。他人に見えるコメントを書く機能は、その部分だけ別サービスにしたほうがいいんじゃないでしょうか、例えば「はてなコメントC!」みたいな感じで。そして、そのコメント数に応じて、話題エントリー(人気ではなく)として一覧にする、と。談合や炎上は残るため、今以上にひどいことになるかもしれないので、ブラックリスト機能はあったほうがいいかもしれません。
今の「人気エントリー」は、いろんな要素が混ざりすぎています。
最後に
「こうすればいいんじゃないか」と書いてみたものの、手遅れな感じもしています。ブックマークを共有するという意味での「ソーシャル」が、コメント欄で発言しあうという意味での「ソーシャル」にすっかり変わってしまいました。コメント機能が強く、ブックマークとしての機能が弱まったのだと思います。
はてなブックマークは、フロー要素が強すぎたんですよね。ブックマークなのに。