なかけんのFP3級ノート
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贈与と税金

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贈与税

個人から個人へ贈与があったとき、受贈者(贈与された人)に贈与税が課せられます。贈与税が課せられるのは、受贈者だけで、贈与者(贈与した人)は何もありません。

国内に住所がある人は、贈与された、国内・国外すべての財産に課税されます。


なお、法人から個人へ贈与があったときは、受贈者には贈与税ではなく、所得税や住民税が課せられます。個人から法人への贈与の場合は、受贈者には贈与税ではなく、法人税が課せられます。

贈与税の課税財産

贈与税の課税対象となる財産には、本来の贈与財産みなし贈与財産 があります。

本来の贈与財産 とは、実際の贈与によって取得した、現金、有価証券、不動産、貴金属などをいいます。

みなし贈与財産 は、直接贈与されたわけではないが、実質的に贈与と同様の性質をもつ財産のことです。

みなし贈与財産には、例えば、次のようなものがあります。

生命保険
保険料を支払っていた人と保険金を受け取った人が違う場合、受け取った満期保険金は贈与とみなされます
低額贈与
時価と比べて著しく低い価格で財産を受けた場合、その差額は贈与とみなされます
債務免除
借金の免除など、債務を免除してもらうと、その金額は贈与とみなされます

贈与税の非課税資産

個人から個人への贈与であっても、贈与税の課税対象とならない場合もあります。例えば、次のようなものがあります。

扶養義務者からの生活費や教育費
例えば、大学で一人暮らしをするときに、親から毎月生活費をもらったり学費をもらうというのは、贈与税の対象にはなりません。
社交上必要と認められる香典、贈答、見舞い、祝物等
一般的な金額であれば、これらは贈与税の対象にはなりません。
相続開始年の贈与
相続開始年に、被相続人から受けた贈与は、贈与税ではなく相続税の課税対象となります。詳しくは、相続のところで見ます。

贈与税の計算

贈与税は、受贈者ごとに、1月1日から12月31日までの1年間に受け取ったすべての贈与財産に対して課税されます。これを暦年課税といいます。

なお、贈与税の課税方法には、相続時に精算する 相続時精算課税 を選ぶこともできますが、これは相続のところで見ることにします。

暦年課税の場合、贈与税を計算するには、まず課税価格を計算します。次の式を用います。

贈与税の課税価格の計算

贈与税の課税価格 = 本来の贈与財産 + みなし贈与財産 - 非課税財産

この課税価額から、基礎控除110万円を引き、贈与税の速算表をもとに計算します。

贈与税額の計算

贈与税額 = (課税価格 - 基礎控除110万円) x 税率 - 控除額

速算表は、次のページをご覧ください。

この表は、FP3級の試験では提示されるので、覚える必要はありません。

贈与された額が110万円以下なら、贈与税は課税されず、申告も不要です。

贈与税の特例など

贈与税の配偶者控除の特例

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、国内の居住用不動産やその敷地、または、居住用不動産の購入資金の贈与があった場合、最高2,000万円を課税価格から控除できます。翌年3月15日までにその不動産に住み、その後も住み続ける見込みでないといけません。

これは、基礎控除の110万円とは別なので、合計で2,110万円まで課税されないことになります。

ただし、この特例は、同じ配偶者からの贈与について、一生で一回しか使えません。

この控除により納税額がゼロになったとしても、この特例を使うなら申告が必要です。

教育資金の贈与税の非課税措置

子や孫に対して、父母や祖父母から教育資金を贈与したとき、一定金額までが非課税となります。この制度を「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」といいます。

このとき、受贈者は、前年の所得金額が1,000万円以下で30歳未満の子や孫でないといけません。

非課税となる額は、資金が学校に支払われる場合は 1,500万円、学校以外(塾など)に支払われる場合は500万円となります。

結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置

子や孫に対して、父母や祖父母が結婚資金や子育て資金を贈与したとき、一定金額までが非課税となります。この制度を「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置」といいます。

このとき、受贈者は、前年の所得金額が1,000万円以下で、20歳以上50歳未満の子や孫でないといけません。

非課税となる額は、結婚資金に使用する場合は300万円、子育て資金に使用する場合は1,000万円となっています。

住宅取得等資金の贈与税の非課税措置

子や孫に対して、父母や祖父母が住宅購入資金を贈与したとき、一定金額までが非課税となります。この制度を「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置」といいます。

受贈者は、子や孫であり、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上でないといけません。

また、贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅を買うことが条件です。

所得と住宅は以下の制限があります。

  • 所得が1,000万円以下で、対象の住宅の床面積が40平米以上240平米以下
  • 所得が1,000万円超2,000万円以下で、対象の住宅の床面積が50平米以上240平米以下

非課税となる額は、一般住宅の場合は1,000万円、省エネ住宅だと1,500万円になります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、1組の贈与者と受贈者について、累計2,500万円までの贈与が非課税となる制度です。

贈与者は、父母や祖父母で、贈与のあった年の1月1日現在で60歳以上であることが条件です。

受贈者は、贈与のあった年の1月1日現在、20歳以上の子や孫です。

贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに、相続時精算課税届出書を提出しなければいけません。

税金は、2,500万円までは非課税 で、2,500万円を超える部分には一律20%の贈与税 がかかります。

例えば、3,000万円の贈与があった場合は、500万円に対して20%の贈与税がかかるので、贈与税は100万円となります。


制度の名前の通り、相続時には精算を行います。相続発生時には、贈与財産と相続財産を合算して計算した相続税額から、すでに納付した贈与税額を控除します。このとき、贈与財産は、贈与されたときの価格で評価します。納付していた贈与税のほうが多ければ、差額が還付されます。

この制度は、例えば、父親からの贈与に対して使うと、今後贈与されたものはすべてこの制度を使って贈与税を計算します。一度この制度を使うと、暦年課税に戻すことはできません。

この制度は、贈与者ごとに使えます。なので、例えば、父親からの贈与に対してこの制度を使って、母親からの贈与は暦年課税のままにすることはできます。

贈与税の申告と納付

贈与税(暦年課税)は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、申告と納付を行う必要があります。

受贈者の居住地を管轄する税務署長に申告書を提出し、納付します。

納税は、申告期限までに金銭で一括に納付するのが原則です。例えば、高額の不動産を贈与された場合でも、贈与された不動産の一部で納税すること(いわゆる「物納」)はできず、金銭で納める必要があります。ただ、急に高額な不動産などを贈与されても、納税用の金銭をすぐには用意できないこともあります。そこで、延納というシステムがあります。

延納とは、金銭で納付が困難な場合に、担保を提供することによって、5年まで納付を延期できる制度です。

延納を行うには、以下のすべての条件を満たす必要があります。

  • 税額が10万円を超えている
  • 金銭で納付することが困難
  • 延納申請書・担保提供関係書類を納付期限までに提出する
  • 担保を提供する

延納できる期間は最大5年で、その間には利子税がつきます(年6.6%)。