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相続財産の評価(不動産以外)

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ここでは、贈与や相続があったときの不動産以外についての評価方法を見ていきます。

財産評価の原則

相続税や贈与税は、一定の金額を超える財産を取得した場合に課される税金です。しかし、これらの財産は、無償で取得しているため、値段はわかりません。もとの購入価格がわかっていたとしても、年月がたっていれば評価額も変わっていることでしょう。

そのため、相続税や贈与税の計算では、財産をいくらに見積もるかという「財産の評価」が必要となります。

財産の評価は、下の「財産評価基本通達」に詳しく記載されています。

細かく決められているのですが、財産を評価する上での原則は、「財産は時価で評価する」というものです。時価とは、課税時期において、一般に取引されると考えられる価格のことです。

この時価をどのように計算するかが、「財産評価基本通達」に記載されています。

「時価」の厳密な定義

財産評価基本通達では、時価について、次のように定めています。

「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」

このページでは、不動産以外を扱います。不動産は、別のページで扱います。

動産の評価

不動産以外の物を動産といいます。相続税や贈与税に絡んでくる動産には、以下のようなものがあるでしょう。

  • 自動車
  • 宝石や貴金属
  • 骨董品や美術品

動産は、1個・1組ごとに評価します。しかし、家庭用動産などの場合、1個・1組が5万円以下のものは、一括して評価することができます。実務上は、「家財一式〇〇万円」と書くことが多いです。

動産の評価は、原則、調達価額でおこないます。調達価額とは、課税時期において、その財産を取得するときの価格です。この価格がわからない場合は、新品の価格から経過年数による減価額(定率法)を引いて求める方法もあります。

車の場合は、中古車市場の価格などを参考に評価します。

家電の場合、特に、テレビや冷蔵庫などは、5万円を超えるケースもあるでしょう。中古の状態で再取得する価格を求めるのは難しそうです。ただ、償却額を考えると5万円を超えることは少ないかもしれません。たいていの家電は、耐用年数は5年程度なので、購入して時間がたっていれば、5万円は下回るでしょう。5万円を下回っていれば、他の動産と一緒に、一括で評価することができます。

宝石や骨董品などは、買い取り業者に見積もってもらうなどの方法があります。

ゴルフ会員権の評価

ここからは、動産でも不動産でもないものの評価について見ていきます。

まずは、ゴルフ会員権です。

ゴルフ会員権は、なじみのない人も多いかもしれませんが、特定のゴルフ場で格安でプレーできるなど特典がついている会員権です。

この会員権は、株式のように売買できるものがあります。今では百万円を切っているものもありますが、バブルのときは数千万円や億円単位で取引されているケースもありました。

ゴルフ会員権は、取引可能なものであれば、課税時期の取引価額の70% で評価するように定められています。

金融資産の評価

ここでは、株以外の金融資産の評価について見ていきます。

預貯金の評価

預貯金の価額は、次のように評価します:「課税時期の預貯金残高 + 経過利子 - 源泉徴収額」。

経過利子とは、課税時期に解約するとして、その時期までに受け取れる利子のことです。

ただし、普通預金などで、利息の額が少ない場合は、課税時期の預入高で評価します。

公社債の評価

上場している利付公社債の場合は、次のように評価します;「課税時期の最終価額 + 経過利子 - 源泉徴収額」。

売却したときに得られる金額ということですね。

ただし、個人向け国債の場合は、課税時期で中途換金した場合の価額になります。

生命保険契約に関する権利の評価

生命保険で、次のようなケースを考えてみましょう。

夫と妻と子の3人家族があったとします。夫も妻も収入があり、夫のほうが収入が多いため、次のような生命保険に入ったとします。

  • 契約者:
  • 被保険者:
  • 受取人:

保険料は、契約者の夫が払っています。この生命保険では、妻が亡くなった場合などで夫に保険金が支払われます。

ここで、夫のほうが亡くなったとしましょう。この場合、この生命保険はどうなってしまうのでしょうか。

今まで保険料を払い込んでいるので、だれか別の人に引き継いだ方がいいですね。これを「生命保険契約に関する権利」といいます。

例えば、妻が保険料を払うようにして、次のように変更することが考えられます。

  • 契約者:
  • 被保険者:
  • 受取人:

こうすると、妻が亡くなったときに死亡保険金が受け取れる、という保険が生きたままになります。

このとき、「妻は "夫が契約していた保険" を相続した」と考えます。この「生命保険契約に関する権利」は、課税時期の解約返戻金で評価します。保険金額ではないので注意しましょう。

株式の評価

最後に、株式の評価について見ていきます。

上場株式等ETFなどの上場投資信託や、不動産投資信託などのJ-REITを含む)の場合は、実際に取引されているので、その価格が利用できます。ただ、そのままの価格を使うのではなくて、以下のように計算します。

まず、課税時期の終値(相続発生日の最終価格)と、課税時期以前3か月の各月について終値の平均を計算します。この4つの価格のうち、一番低い価格で評価します。

例えば、被相続人の死亡日がX年3月15日の場合、以下の4つの価格を計算します。

  • X年3月15日の終値
  • X年1月の各日の終値の平均額
  • X年2月の各日の終値の平均額
  • X年3月の各日の終値の平均額

この4つの中で、一番低い価格で評価します。


一方、取引相場のない株式もありえます。例えば、自分で株式会社を作って家族経営していた場合です。友達が起業して、そこに出資して株を手にしている場合もあります。

上場していなければ、この株式を贈与されたときなどに、どのように評価するかという問題があります。

まず、会社の規模によって、大会社・中会社・小会社の3つに分けます。規模は、従業員数、総資産額、取引額で判断します。例えば、70人以上なら大会社に分類されます。ただ、他の判断基準は、業種によって細かく定められています。

会社の規模で会社を分けた後は、評価方式を特定します。

評価方式は、贈与や相続で取得した株主が同族株主の場合は、原則的評価方式を使う、同族株主以外の場合は、特例的評価方式を使うと定められています。

同族株主かどうかは、ざっくりいえば、前者は自分の一族で会社を経営しているので、自分も経営権を手に入れたことになる一方、後者は経営権がないので、単に株をもっているだけ、という違いになります。この両者では「株式を取得した」意味が異なるので、評価方法が異なっています。

原則的評価方法の場合、会社の規模に応じて、次のような評価方式(詳しくは後述)を使います。

  • 大会社:類似業種比準方式
  • 中会社:類似業種比準方式純資産価額方式の併用
  • 小会社:純資産価額方式

また、同族株主以外の場合に使う特例的評価方式は、会社の規模によらず、配当還元方式を使います。

類似業種比準方式 は、類似業種の株価をベースにし、以下の3つの指標で比準して評価する方法です。

  • 1株あたりの配当金額
  • 1株あたりの利益金額
  • 1株あたりの純資産価額

純資産価額方式 は、会社の総資産や負債を相続税の評価に洗い替えて、総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。ざっくりといえば、課税時期に会社を解散した場合に払い戻される金額を計算する方法です。

配当還元方式 は、一年間の配当金額(過去2年間の平均。ただし1株あたり2.5円が下限)を、一定の利率(10%)で還元した価格をもとに評価する方法です。