なかけんのFP3級ノート
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マーケット環境の理解

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ここでは、経済・金融の基礎知識を見ていきます。さまざまな金融商品に影響を与えるマーケット環境について学んでいきます。

マーケット

まったく投資をしたことがない人でも、株やFXなどの言葉を聞いたことがあるでしょう。

日々、世界中で株や債券、外国為替(後で詳しく説明します)などの取引が行われています。このような金融商品の取引を行う場所を、市場 (「しじょう」と読む)といい、英語では マーケット(market) といいます。

例えば、ここまでに、年金や保険が出てきましたが、集められた保険料は、さまざまな金融商品に投資され、将来の年金・保険金のために運用されています。個人でまったく投資をしていなくても、間接的にマーケットに参加している、ということができます。「投資をしていないから、経済ニュースは自分には関係ない」ということはありません。

金融市場

お金の余っているところから足りないところにお金を融通することを 金融 といいます。

このお金を融通するためにお金の貸し借りを行っているところを 金融市場 といいます。

大きく分けると、取引期間が1年未満の短期金融市場と、1年以上の長期金融市場に分かれます。

短期金融市場には、銀行同士がやり取りするインターバンク市場と、一般企業も参加するオープン市場があります。

インターバンク市場では、日々の短期的な資金の調整を行うコール市場などが含まれます。一番短いものは、「今日借りて明日返す」という取引です。

オープン市場では、国や一般企業などが発行する期間の短い債券の売買などが行われています。

お金の借り手は貸し手に対して、金利を支払います。金利は、お金を借りるための手数料と考えることもできます。一般に、みんながお金を借りたいときには金利は上昇し、借りたい人が少ないと金利は下落します。

長期金融市場には、以下で述べる、株式市場や債券市場があります。

株式市場

株式市場(株式マーケット)は、株式の売買を行うマーケットです。

株式とは、企業が事業に必要な資金を調達するために発行するものです。株式は株ともいいます。

企業は、業績が上がって利益が出ると、株を持っている人(株主)に利益の一部を配当金という形で還元します。また、株を購入した人は、別の人に売ることもできます。

こうして、企業は事業に必要な資金を調達できるし、株を購入する人は配当金や売却益を狙うことができます。

一般に、業績のいい企業ほど、みんながその株を欲しがるので、価格(「株価」という)は上昇します。株価を個別に見ると、各企業の業績が反映されていると考えることができますが、日本全体で見れば、国内の景気動向を表している、と考えることもできます。

債券市場

債券市場(債券マーケット)は、国債などの債券の売買を行うマーケットです。

債券とは、国、地方公共団体、企業などが資金を調達するために発行するものです。株とは異なり、債券には満期があり、満期を迎えると、調達した資金を債券保有者に返します。

一般に、半年に一度、決められた利息が債券保有者に払われます。「満期になったら返す」「利息を払う」というお金の流れだけを見ると、債券を発行することは、お金を借りたとき(借入)と同じです。

債券の保有者は、満期を迎える前に、債券を別の人に売却することができます。

国や企業は、債券を発行することで必要な資金を調達できるし、債券を購入する人は、利息や売却益を狙うことができます。

一般に、信用のある国・企業ほど、満期日にお金が返ってくる可能性が高いので、債券の価格は高くなります。また、景気がいいと、株で売買益を狙う人が増えて債券を買う人が減る(業績がよくても債券は利息以上はもらえない)ため、債券の価格は低くなる傾向にあります。

商品市場

商品市場とは、金(ゴールド)や原油などの商品の売買を行う市場です。

価格の変動リスクをコントロールするための市場ですが、金(ゴールド)は安全資産といわれており、景気が悪くなると金の価格が上昇する傾向にあります。また、どんな経済活動にも原油が必要なことから、景気が良くなると、原油の価格が上昇する傾向にあります。

外国為替市場

外国為替市場(がいこくかわせしじょう)とは、円、ドル、ユーロなど、世界各国の通貨同士をやり取りする市場です。

個人であれば、外貨に触れるのは海外旅行に行ったときでしょう。他にも、貿易などの実需によって外貨を売買することもありますし、外国の金融商品に投資する場合でも外貨を売買することがあります。

経済指標

ここまで見てきたように、金融市場では、株、債券、商品、為替の取引が行われています。これらの価格は、各国の景気の状況などが反映されています。

各国の景気の状況を判断したり予測したりするには、経済指標 を使います。経済指標とは、経済状況や景気動向を把握するための統計指標のことです。

経済指標はいろいろなものがありますが、FP3級の試験で良く出題されるものは以下の通りです。

GDP(国内総生産)

GDP

GDP(国内総生産)とは、国内で一定期間に生産された商品やサービスなどの付加価値の総額 のことです。GDP は、Gross Domestic Product の略です。年に4回、内閣府が発表します。

付加価値とは、商品やサービスの価格から費用を引いたものです。例えば、300円で部品を仕入れて組み立てて、1000円で売ったとすると、組み立てた仕事によって生み出された付加価値は、「1,000 - 300 = 700円」となります。

国内全体で生み出された付加価値の合計が、国内総生産です。国内の経済の規模を表しています。対象は国内だけなので、日本企業が海外工場で生産したものは入りません。

国内総生産は、各国で計算されているので、国同士で比較して、経済の規模を比較することができます。

名目GDPと実質GDP

先ほど、「部品300円、商品1000円、付加価値700円」という例を見ました。

これが、「部品300円、商品1070円、付加価値770円」となれば、付加価値を上げる努力をして、付加価値が増えたと考えられます。

一方、物価が上がったことによって、「部品330円、商品1100円」になったとしましょう。この場合も、付加価値は770円です。しかし、この例では、付加価値を上げる努力をしたというよりも、物価が上がった要因が大きいかもしれません。

このように、経済の成長を測る上で、物価の影響を除きたい場合があります。物価の影響を除く前のGDPを 名目GDP といい、物価の影響を除いたGDPを 実質GDP といいます。

名目と実質

経済用語では、この名目と実質がよく出てきます。「名目」はありのままの数字、「実質」は物価変動を除いた数字のことです。「実質」は、物価の変動以外の実質的な値ということですね。

経済成長率

経済成長率 とは、国の経済規模がどの程度拡大しているかを表すものです。通常は、GDPの増加率が使われます。

魅力的な商品を作ったり、費用を抑えたり、生産効率を上げたりすることで、付加価値は増え、GDPは増加します。この増加比率で、各国の経済の成長率を測ります。

景気動向指数

日常生活でも、「景気がいい(好況:こうきょう)」「景気が悪い(不況:ふきょう)」といったことを言います。

基本的に、景気は、ずっといいとかずっと悪いということはなく、長いスパンで見ると、「不況」「回復」「好況」「後退」の4つの局面が順番に訪れていきます。

この景気動向を見るために使うのが、景気動向指数です。景気動向指数 とは、生産や雇用などの経済活動の状況を表す指標を統合した指数 です。

景気動向指数には、景気の先行きを表す先行指数、景気の現状を表す一致指数、景気より遅れて反応する遅行指数の3種類があります。

例えば、先行指数には、機械受注新規求人数 などの統計データを統合して作ります。この数値が上がると、設備投資をして商品を作っていこう、人をどんどん雇っていこう、ということなので、今後、景気がよくなっていく、と判断できます。

一致指数は、生産指数営業利益 などの統計データを統合して作ります。この数値が上がるタイミングは、景気がよくなっていくタイミングとほぼ合っていると考えられます。

遅行指数は、完全失業率家計消費支出 などの統計データを結合して作ります。景気が良くなると、職が見つかったり、給料が増えて支出が増えたりするので、タイミングが後ずれして指数が改善していくと考えられます。

各指数には、CI(コンボジットインデックス)とDI(ディフュージョンインデックス)があります。

CIは、構成する指標の動きを合成したもので、変動の大きさやテンポ(量感)を測定することができます。DIは、改善している指数の割合を表したもので、景気の動きが経済部門変どの程度波及しているかを測定することを目的としています。

日銀短観

日銀短観 とは、日本銀行が、企業経営者を対象に、3か月ごとに行っているアンケート調査です。資金繰り、雇用、業況の見通しなどについて質問します。

この中でも、業況判断DI がよく注目されます(新聞にも載ることが多いです)。今と3カ月後の業況を比べて、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いたものです。

物価指数

物価指数は、消費者物価指数企業物価指数 が代表的です。

消費者物価指数(CPI)は、家計が購入する商品の総合的な水準を示します。総務省が毎月発表しています。

企業物価指数は企業間で取引されている商品価格の変動を表します。日銀が毎月公表しています。

通常、景気が良くなっていくと、物価が上がっていきます。また、国内景気が変わらなくても、輸入するものの値段が上がれば(例えば、原油とか)、まず企業間の取引に影響して企業物価指数が上がり、それが一般商品に波及して消費者物価指数が上がる、という流れになるのが一般的です。

インフレとデフレ

物価が上昇することを、インフレ といいます。正確には、インフレーションといいます。

インフレは、商品が売れることで起こる場合もあれば、商品の仕入コストなどが転嫁されて起こることもあります。インフレが起こると、相対的にお金の価値が下がるため、物価の上昇ほど収入が増えない場合や、貯金だけで生活するような場合(例えば老後とか)には、悪い影響を受けます。

一方、物価が下落することを、デフレといいます。

デフレが起こると、相対的にお金の価値が上がっているため、お金を借りている人(例えば住宅ローンを組んでいる人とか)には負担が増えます。

マネーストック

景気がいいときには、みんなお金を使うようになります。そのため、やり取りされているお金の量がわかれば、景気がいい・悪いの判断ができると考えられます。

個人や法人(金融機関以外)、地方公共団体などが保有する通貨量のことを、マネーストック といいます。日銀は、マネーストックに関する統計を毎月発表しています。

マーケットの変動要因

景気変動と市場への影響

市場に影響を与えるものとして、景気変動があります。

景気は、「不況」「回復」「好況」「後退」の4つの局面が順番に訪れていきます。

景気がいいとき(好況)とは、一般に、企業の作るモノが売れ、個人は給料が上がり、そのお金でモノを買う、というサイクルが生まれます。

このとき、モノを買うためにお金を借りる人が増えるため、金利は上昇します。また、モノの値段を上げても売れるので、物価は上昇します。企業の業績はよくなるので、株価は上昇します。

金利が上がると、その国の通貨の人気が高まるため、その国通貨の価値が上がります。日本の場合なら、円高になるということです。


一方、景気が悪いとき(不況)では逆のことが起こります。

モノを作っても売れないので、お金を借りて新規事業をしたり高い買い物をする人が減るので、金利は下落します。モノが売れないから値段は下がるので、物価は下落します。企業の業績も悪くなるため、株価は下落します。通貨の価値は下がります。

こうして、景気動向は、金利、物価、株式、為替に影響を与えます。

金融政策と市場への影響

市場に影響を与えるものには、日銀の金融政策があります。

日銀(日本銀行)は、物価の安定と金融システムの安定を目的とする、日本の中央銀行です。

例えば、みんながお金を借りて高い買い物をするようになると、物価がどんどん上がっていくかもしれません。こうした場合、給料が同じように上がっていかないと、生活はどんどん苦しくなります。また、特定の資産価格(不動産の値段など)が上がり、バブルが生まれてしまうかもしれません。

このような急激な物価上昇等を抑えて、物価を安定させるのが日銀の仕事です。この安定化のための手段を 金融政策 といいます。直接、モノの価格をいじることはできないので、一般的には、世の中に出回るお金の量を調節します。

金融政策はいろいろな種類がありますが、FP3級の試験で出題されるものには、次のようなものがあります。

公開市場操作

公開市場操作 とは、日銀は、短期金融市場において、手形や国債などの売買を行い、金融市場の資金量を調節することです。以下の2種類があります。

1つ目の 売りオペレーション は、日銀が保有する国債などを売却することです。日銀は売却したことで資金を得るため、市場に出回る資金の量を減らすことができます。理論的には、これにより、金利が上昇します。

金利が上昇すると、「お金を借りるのをやめよう」という人が増えてきて、資金需要が減り、物価の上昇を抑える効果があります。

2つ目の 売りオペレーション は、日銀が金融機関から国債などを購入することです。日銀は購入したことで資金を払うため、市場に出回る資金の量が増えます。理論的には、これにより、金利が下落します。

金利が下落すると、資金需要が出て、景気の悪化を抑える効果があります。

預金準備率操作

金融機関は、準備預金として、一定割合の預金を日銀に預けることが義務付けられています。この割合のことを、預金準備率 といいます。

この預金準備率を引き上げれば、金融機関は日銀にたくさんのお金を預けなければならず、市場に出回る資金の量を減らすことができます。金利が上がるので資金需要が減り、物価の上昇が抑えられます。

一方、預金準備率を引き下げれば、金融機関は市場に多くの資金を投入できるようになります。市場に出回る資金の量が増え、金利は低下し、資金需要が出てきて景気の悪化を抑える効果があります。

マイナス金利とは

ニュースで「マイナス金利」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

金融機関は、日銀に口座を持っており、お金を預けています。上で説明した「準備預金」も、この口座内で預けています。

この預金残高の一部に対して、マイナス金利を設定する、という政策が、2016年1月から導入されました。この政策により、日銀は、市場に出回る資金の量を増やそうとしています。

ただ、一般企業の資金ニーズは少なく、各銀行にとっては、収益が減るだけのような政策です。今のところ、このコストを顧客に転換するために、私たちの預金に対してマイナス金利を導入する銀行はありません。

といっても、いろいろな手数料がじわじわと上がってきていますが。。。

財政政策と市場への影響

市場に影響を与えるものには、財政政策もあります。

財政とは、国や地方公共団体が行う経済活動のことで、以下の3つの機能があります。

資源配分機能
警察、消防、水道などのサービス運営や、学校、図書館などを作るために投資すること
所得再配分機能
所得格差を緩和するため、所得に応じた税の徴収や、失業保険や生活保護の支払いなどによって、再配分すること
経済安定化機能
不況時には公共投資や減税を行い、インフレ時には金融引き締めを行って、景気の変動が大きくなりすぎないように抑えること

財政政策とは、国や地方公共団体が行う、経済に影響を与える政策のことで、公共投資や増税・減税などがあります。財政政策は、景気に影響を与え、市場にもその影響が波及していきます。

問題を解いてみましょう

ここまでの内容を踏まえて、問題を解いてみましょう。〇か×か、答えましょう。

例題

GDPには、日本企業の現地法人が海外で生産した財・サービスの付加価値も含まれる。

Answer

×
GDP(国内総生産)とは、一定期間内に国内で生産された付加価値の総額を示すものであり、海外で生産されたものは含みません。

例題

実質GDPとは、一定期間内に国内で生産された財やサービスの付加価値の合計額から、物価変動の影響を除いた指標のことである。

Answer


正しいです。
物価の影響を取り除く前は名目GDP、物価の影響を取り除いた後は実質GDPといいます。