なかけんのFP3級ノート
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損害保険

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ここでは、損害保険の種類やその内容についてみていきます。

損害保険とは

損害保険 とは、不慮の事故や災害に対して金銭的負担を軽減するための保険 です。

例えば、事故によってケガをすれば、その治療費が必要になります。自分で運転していた車が事故を起こせば、車を修理したり新しく買い直す費用が掛かります。相手をケガさせてしまった場合には、損害賠償責任を負う可能性もあります。

損害保険は、こうしたリスクに金銭で備える保険です。

損害保険料

損害保険料算定の原則

生命保険 の場合、保険料の計算は、大数の法則と収支相当の原則に基づいていることを見ました。

損害保険の保険料も、これらの原則に基づいて計算されます。さらに、損害保険の場合は、次の2つの原則にも基づかれています。

給付・反対給付金等の原則(公平の原則)
保険料や保険金は、被保険者のリスクの大きさや事故発生の確率に応じたものでなければならない という原則(例えば、リスクの高い職業の人は保険料が高い、など)
利得禁止の原則
保険金の受け取りによって利益を得てはいけない、という原則(つまり、実際の被害額以上に保険金を受け取ってはいけない、ということ)

保険金額と保険価額

保険金 とは、保険事故が起こったときに支払われるお金のことで、保険金額とはその金額のことです。

保険価額 とは、保険の対象の評価額です。保険事故が起こったときに発生する被害の最高見積額のことです。

保険事故が起こったときに発生する被害を保険金でカバーすることになるのですが、どれくらいカバーするか、つまり、保険金額と保険価額の関係に応じて、次のようにいいます。

全部保険
保険金額と保険価額が等しい保険。保険価額の範囲内で、実際の損害額が支払われます。
一部保険
保険金額が保険価額より小さい保険。保険金額と保険価額との割合に比例して保険金が支払われる 比例払い方式 や、実際の損害額が支払われる 実損払い方式 があります。
超過保険
保険金額が保険価額より大きい保険。保険価額の範囲内で、実際の損害額が支払われます。保険価額を上回る保険金額は、利得禁止の原則より、無効です。

なぜ超過保険になる?

利得禁止の原則があるのだから、どんなときに超過保険の状態になるのか、疑問に思う人がいるかもしれません。

超過保険になってしまう例として、長期契約の火災保険が挙げられます。当初の契約では例えば2000万円の価値があった建物でも、年月が経つと価値は下がっていくのが普通です。その結果、建物の評価額が下がっているのに、保険金額は昔のままだと、超過保険の状態になってしまうことがあります。

この場合、超過部分に対しては、余計な保険金料を払っていることになります。超過部分に対する保険料は、過去にさかのぼって取り戻せる可能性があります。

主な損害保険の種類

損害保険はさまざまな種類があります。その中でも、FP3級の試験で良く出題されるものについて見ていきましょう。

火災保険

火災保険 は、居住用の建物と建物内の家財を対象に、火災や自然災害による被害を補償する保険です。

火災保険のうち、住宅火災保険 は、火災、風災(突風や竜巻など)、雪災、落雷などの自然災害による被害を補償する保険です。ただし、水災、地震、噴火、津波は対象外です。

住宅総合保険 は、住宅火災保険の補償範囲に加えて、水災、盗難、持ち出し(旅行や買い物中の破損や盗難など)による家財の損害も補償する保険です。ただし、この住宅総合保険でも、地震、噴火、津波は対象外です。

地震や噴火、津波を補償するには、後で取り上げる 地震保険 へ加入する必要があります。

火災保険で支払われる保険金は、保険金額が保険価額の80%以上なら実損てん補(損害額が支払われる)です。80%未満なら比例てん補となり、次の式で計算されます。

火災保険で支払われる保険金(比例てん補)

損害額 × 保険金額 ÷ (保険価額 x 80%)

地震保険

地震保険 は、地震、噴火、津波による被害、また、これらが原因となって起こる火災による被害を補償する保険 です。単独で加入することはできません。地震保険に加入するには、火災保険の特約として加入します

地震保険は、住居用建物とその住宅内の家具が補償対象です。ただし、現金、有価証券、1個30万円を超える貴金属、自動車などは対象外です。

地震保険の保険料

地震保険の基本料率は、建物の構造(木造かどうかなど)や建物の所在地(地震の多い地域かどうか)によって決まります。

また、地震保険には、保険料の割引制度があります。築年割引、耐震投球割引、免震建物割引、耐震診断割引などがあり、最大50%の割引ができます。地震が起きても、被害が少ないと考えられる場合には保険料を割り引いてくれる、ということですね。これらの割引は重複適用できない点に注意が必要です。

地震保険の保険金額

地震保険では、建物の補償を100%にすることができません。地震保険で契約できる保険金は、主契約の火災保険金額の30%~50%の間 と定められています。

さらに、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限 となっています。

実際に支払われる保険金は、建物の被害状況によって変わります。全損なら100%、大半損なら60%、小半損なら30%、一部損なら5% の4段階となっています。

地震保険の控除額

地震保険の保険料を払うと、その金額分、その年の所得税などを控除することができる、地震保険料控除 という仕組みがあります。

所得税は、地震保険料の全額が控除となります。ただし、上限は50,000円です。

住民税は、地震保険料の2分の1が控除となります。ただし、上限は25,000円です。

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)

自動車損害賠償責任保険(略して、自賠責保険) とは、自動車などを運転して人身事故を起こしたときに、被保険者が損害賠償責任を負う場合の損害を補償する保険です。

自動車損害賠償保障法により、自動車や二輪自動車(原動機付自転車を含む)の所有者と運転者には、自賠責保険への加入義務があります。

自賠責保険の支払限度額は、死亡事故の場合、被害者1人当たり 3,000万円です。傷害事故の場合、被害者1人当たり 120万円で、後遺障害のある場合は、障害の度合いに応じて、75万円~4,000万円が支払われます。

自賠責保険は、事故により、他人が死亡したり障害を与えた場合の保険です。そのため、車や建物などの物品への損害、本人のケガ、自損事故は対象外です。これらを補償するには、民間の保険に加入する必要があります。

任意加入の自動車保険

自動車の所有者や運転者は、自賠責保険に加入する義務がありますが、この保険だけでは、運転中に起こる様々なリスクに対応できません。そこで、任意加入の自動車保険がいろいろあります。

対人賠償保険
家族以外の他人を死傷させてしまった場合、被害者に自賠責保険の支払限度額を超える分を支払うための保険
対物賠償保険
他人の車、建物など、他人の物を破損させてしまった場合の賠償額を補償する保険
自損事故保険
自損事故(自分だけで起こした単独事故)を起こしたときに、運転手や同乗者が死傷したときに保険金が支払われる保険
無保険車傷害保険
他の車に衝突されたものの、加害者が保険に入っていなかった場合や、当て逃げなど加害者がだれかわからない場合などで、十分な賠償がされなかったときに、補償を受けるための保険。死亡、後遺障害のみが対象で、後遺傷害が残らずに完治するケースは対象外。
搭乗者傷害保険
事故が起きて搭乗者がケガを負ったとき、過失の割合に関係なく 契約に定めた額の保険金が支払われる保険
人身傷害補償保険
事故が起きて搭乗者がケガを負ったとき、過失の割合に関係なく 実際の損害分(治療費、休業補償、慰謝料など)の保険金が支払われる保険
車両保険
衝突、火災、台風などにより、自分の自動車に生じた損害を補償する保険

傷害保険

傷害保険とは、急激かつ偶然な外来の事故による傷害を負ったときに保険金が支払われる保険です。

傷害保険の保険料は、年齢や性別によって違いはないですが、職業などによって異なる場合があります。

以下のようなものがあります。

普通傷害保険
日常生活での傷害を補償する保険。海外旅行中の傷害も対象。ただし、地震や噴火、津波によるものは対象外で、インフルエンザ、食中毒、熱中症なども対象外。
家族傷害保険
普通傷害保険と同じ保障で、本人以外に、配偶者、生計を共にする同居の親族、別居の未婚の子が受けられる保険。
国内旅行傷害保険
国内旅行のために、自宅を出発してから帰宅するまでの間に負ったケガを補償する保険。食中毒は補償対象だが、地震、噴火、津波によるものは対象外。
海外旅行傷害保険
海外旅行のために、自宅を出発してから帰宅するまでの間に負ったケガや病気を補償する保険。食中毒や、地震、噴火、津波によるものも対象。

賠償責任保険

賠償責任保険 とは、偶然の事故で他人の財産や身体を傷つけて、損害賠償責任を負った場合の損害を補償する保険です。

以下のような種類があります。

個人賠償責任保険
日常生活の事故で、他人の財産や身体を気付つけた場合の賠償責任を補償する保険。家族の賠償責任も補償。ただし、業務上の事故や自動車事故は補償の対象外。
生産物賠償責任保険(PL保険)
企業などが製造・販売した商品による事故が発生した場合の、損害賠償金や訴訟費用を補償する保険。ただし、リコール費用などは対象外。
受託者賠償責任保険
他人から預かったものに対する損害賠償責任を補償する保険

費用・利益保険

偶然の事故などによって、企業は製造や販売などを休止しなければならないケースがあります。この場合に被る喪失利益などを補償する保険として、企業費用・利益総合保険 があります。

損害保険と税金

損害保険の保険料や保険金は、税金の扱いにも関係してきます。以下では、この関係について見ていきます。なお、税金全般については、タックスプランニングで詳しく見ます。

地震保険料と税金

損害保険のうち、地震保険に関する保険料は、所得税・住民税の控除に使うことができます。

所得控除に使える額は、所得税の場合最大50,000円、住民税の場合は最大25,000円です。

保険金と税金

損害保険の場合、保険金はほとんど非課税となります。

火災保険金は非課税です。また、傷害保険のうち、ケガや病気で受け取る給付金などは非課税です。自動車保険で賠償金に関連するものも非課税です。

課税対象となるのは、傷害保険のうちの死亡保険金や、自動車保険の搭乗者傷害保険などで死亡したときに支払われる保険金です。これらは、生命保険の死亡保険と同じように課税されます。

つまり、保険の契約者と被保険者が同じ場合は相続税、契約者と受取人が同じ場合は所得税、契約者・被保険者・受取人が全員異なる場合は贈与税がかかります。